10.2 軸受の取外し

装置のメンテナンスなどのため、軸受を取外す場合、軸受取付け回りの変形や傷などを発生させないように注意する必要があります。さらに、取外し後の軸受を再使用する場合はより慎重に取外すよう、心がけてください。

取外し時の諸注意

損傷に注意

取外し後に、その軸受や取付け部品を再使用する場合、または軸受の状態などを調査する場合には、取外し時も取付け時と同様、慎重に行ない、軸受や各部品を損傷しないよう、注意する必要があります。

十分な設計検討

特にしまりばめにて、組込んだ軸受の取外しにくいことが多いです。
軸受の周辺構造については、軸受を容易に取外しできるよう、設計段階で検討するとともに、必要に応じて、取外し治具を設計・製作しておくことも大切となります。

外輪の取外し

外輪の取外し
  • しまりばめにて組み込んだ外輪を取外すには、左図に示すように、あらかじめハウジングに、外輪押出しボルト用のねじを円周上、数ヶ所に設けておき、ボルトを均等に締めながら取外します。
  • 普段これらのボルト穴には、栓ねじをしておきます。
外輪の取外し
  • 円すいころ軸受などの分離形軸受では、左図のようにハウジングの肩に数か所の切欠きを設けておき、当て金を用いてプレスで取外すか、軽く叩いて取外します。

小形円筒穴軸受の取外し

円筒穴内輪の取外しは、プレスによって抜くことができれば最も簡単です。
このとき、引抜力を内輪で受けるように注意します。
また、爪付きの引抜治具もよく使われます。いずれも引抜治具の爪が内輪の側面に十分かかるようにしなければなりません。そのため、軸の肩の寸法を考慮したり、肩のところに引抜治具のための溝を加工するなどの工夫が望まれます。

プレスによる内輪の取外し

プレスによる
内輪の取外し

引抜き治具による内輪の取外し

引抜き治具による
内輪の取外し

プーラー(引抜き治具)による内輪の取外し

プーラー(引抜き治具)による
内輪の取外し

大形円筒穴軸受の取外し

大形の円筒穴軸受の内輪取外しには、油圧法(オイルインジェクション)があります。軸に設けた油穴を通して油圧をかけ、引抜きを容易にする方法です。
幅の広い軸受では、引抜治具を併用して取外し作業を行います。
また、NU形、NJ形円筒ころ軸受の内輪の取外しには、誘導加熱法が利用できます。
この方法は、短時間に局部的な加熱を行なって内輪を膨張させ、引抜く方法です。
これらの軸受の内輪を数多く取付ける必要のある場合にも、誘導加熱法が利用されています。

油圧法(オイルインジェクション)

油圧法(オイルインジェクション)

内輪の誘導加熱装置

内輪の誘導加熱装置

小形テーパ穴軸受の取外し

1. 取外しスリーブ

取外しスリーブ付軸受では、下方左図のように、ナットの締込みにより、スリーブを取外す方法です。
作業が困難な場合は、下方右図のように、円周上、数か所にボルト穴を設けたナットを用い、ボルトのねじ込みによりスリーブを引抜きます。

取外しスリーブの引抜き-1

取外しスリーブの引抜き-1

取外しスリーブの引抜き-2

取外しスリーブの引抜き-2

2. アダプタスリーブ

比較的小形のアダプタ付き軸受の取外し方法です。
下図のように、ストッパー(クランプ)で内輪を固定し、ナットを数回戻した後、当て金を使い、スリーブをハンマーで叩いて取外します。

ストッパーを用いたアダプタの取外し

ストッパーを用いたアダプタの取外し

大形テーパ穴軸受の取外し

大形軸受では、下方左図のように、テーパ穴軸に設けた油穴に加圧した油を送り、内輪を膨張させ、軸受を取外すと作業が容易になります。
また、下方右図のように、作業中、急に軸受が抜け出ないように、ストッパーとして油圧ナットなどを利用するスリーブ引抜法もあります。

油圧法による取外し

油圧法による取外し

油圧ナットを利用した取外し

油圧ナットを利用した取外し