0. ベアリングの基本(役割・種類・構成部品)

本章では詳細な解説に先立ち、ベアリングの役割、滑り軸受の種類、転がり軸受との比較、転がり軸受の構成部品と主要な名称についてご説明します。

軸受(ベアリング)とは?その役割とは?

  1. 軸受の役割とは
    摩擦を減らすことで機械が働く効率を高めます。
    摩耗を減らすことで、機械の寿命を長くします。
    焼付きを防ぐことで、機械の故障を減らします。
  2. 軸受の種類には
    部品間;軸と軸受の間に液体、固体、または気体を介して滑り摩擦のみを有する『滑り軸受』と部品間に玉または、ころを入れ、転がり摩擦を有する『転がり軸受』とがあります。
『滑り軸受』

『滑り軸受』

『転がり軸受』

『転がり軸受』

滑り軸受の種類

液体潤滑軸受・・・ホワイトメタル、銅、鉛合金等

  • 油潤滑軸受・・・転がり軸受同様、下記の供給方法があります。
    1. 強制給油(オイルポンプで強制的に潤滑油を軸受に供給する方法)
    2. 油浴(軸受部分を潤滑油中に浸して給油する方法)
    3. 飛沫給油(ギヤなどの回転体による潤滑油の飛沫によって軸受に給油する方法)
    4. 滴下給油(潤滑油容器の穴から時間的にほぼ一定量を軸受に給油する方法)
  • 水潤滑軸受・・・環境問題の進行を抑制する軸受として着目されています。

気体軸受・・・高い回転運動の精度と低摩擦から、転がり軸受の限界を超えた用途で使用されます。

磁気軸受・・・磁力を利用して軸を支持します。

  • 静圧軸受・・・ポンプ等で昇圧した気体を強制的に送り込み回転軸を浮かして支持する軸受(超精密加工工作機械、超精密測定機器など)
  • 動圧軸受・・・軸の回転により回りの油などを巻き込んで油膜を作り、その上に軸を支持する軸受(溝付き軸受が多く、映像・情報機器など)

転がり軸受のメリット(対滑り軸受)

転がり軸受は、滑り軸受と比較して、6つのメリットがあります。

1. 一般的に、すべり軸受よりも摩擦が小さく、剛性が高いです。
2. 寸法、精度、表示等は、ISOなど国際的な標準化や規格化が進んでおり、入手性・互換性に優れています。
3. 保守・交換・点検が容易です。
4. 種類によって、ラジアル荷重、アキシアル荷重(スラスト荷重)、モーメント荷重の単一または複数を受けることができます。
5. 広範囲の温度で使用できます。
6. アンギュラ玉軸受や円すいころ軸受では、高剛性にするため、予圧をかけられます。

ラジアル荷重

ラジアル荷重

アキシアル荷重 (スラスト荷重)

アキシアル荷重
(スラスト荷重)

合成荷重 (ラジアル+アキシアル荷重)

合成荷重
(ラジアル+アキシアル荷重)

モーメント荷重

モーメント荷重

転がり軸受の構成部品と主な名称

転がり軸受(ベアリング、以下軸受ともいう)は、一般に軌道輪、転動体及び保持器から構成されています。構成部品の主な名称は下記のとおりです。

転がり軸受の構成部品と主な名称

その他主要名称

アンギュラ玉軸受

単列アンギュラ玉軸受

深溝玉軸受

単列深溝玉軸受

円すいころ軸受

円すいころ軸受

保持器の役割と種類

保持器の役割

軸受の構成部品の一つに保持器があります。
主な役割として、転動体の間隔を保持し、スムーズな転動体の転がり(軸受の回転)を補助します。

  • 転動体(玉 または ころ)が外輪または内輪から外れないようにしています。
  • 転動体の位置を等間隔にしています。
  • 転動体同士の接触を避け、摩擦増加を抑制し、滑らかな回転を維持しています。

保持器がないと...

保持器がないと...

保持器があると

保持器があると

保持器の種類

保持器には、その材質によって、3つに大別されます。
これらは、主に使用条件によって選定しますが、軸受の種類やサイズによって、限定される場合もあります。

保持器の種類