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精機製品・技術レポート:NSKリニアガイドの軌道溝の設計と特長

1. ゴシックアーク溝の採用

NSKリニアガイドのボール軌道溝は、ゴシックアーク状である(図1)。 溝面に測定ローラを固定して、溝間隔W及び溝と基準面の距離Hを測ることにより軌道溝の位置精度を高精度かつ、容易に計測できることがこの形状の特長である。 これに対し、サーキュラーアーク溝では測定ローラの固定が難しい(図2)。

2. ゴシックアーク溝でも差動滑りの少ない設計

一般のゴシックアーク溝では、四つのアークに囲まれた空間内にボールを圧入することによって予圧をかけている(図3)。 この場合、ボールと溝との接触は四つの楕円面となり、この面における最大回転直径D2と最小回転直径D1との差が大き過ぎるため、差動滑りによる摺動抵抗が増えすぎる欠点がある。
NSKでは、ゴシックアーク溝のピッチをレールとベアリングで微小量δだけずらす設計をしている(図4)。 このため、中程度の予圧状態では、図5の二面接触となり、図3のような差動滑り状態にはならない。 高い予圧設定を行うと、小さな接触楕円が派生して四面接触となる(図6)。 この小さな接触楕円により次に述べる効果が生じる。

3. 摩擦による振動吸収

切削系の工作機械では、従来から滑り案内が用いられていた。これは、滑り摩擦による振動の吸収性を評価したものである。NSKリニアガイドは、派生する小さな接触楕円による摩擦の大きさをδの量と予圧量をコントロールして与え、滑り案内に近い振動吸収性をもたせることができた。

図1:ゴシックアーク溝、図2:サーキュラーアーク溝、図3:一般のゴシックアーク溝 図4:ピッチをずらしたゴシックアーク溝、図5:二面接触、図6:小さな接触面を含む四面接触