精機製品・技術レポート:NSKリニアガイドの速度限界と温度上昇
一般に、転がり案内は滑り案内に比べて静摩擦係数と動摩擦係数との差が小さく、送り速度による動摩擦係数の変化もあまりないことが知られている。このことは、近年、高速化の著しい工作機械において、転がり案内であるリニアガイドが使われている理由の一つとなっている。
工作機械にリニアガイドが使用される場合、ほとんどボールねじと対になっているが、リニアガイドとボールねじの鋼球の公転速度を比較すると、ボールねじの方が同じ直線移動量に対し長い距離の運動をしていることがわかる(図1)。その比は約πDpw/Lで、通常、5~20程度である。ここで、DpwはボールねじのP.C.D, Lはボールねじのリードである。したがって、リニアガイドとボールねじが対で使用される場合、ボールねじの許容速度内であれば、リニアガイドの速度について全く問題ないことがわかる。
リニアガイド単体の場合、100m/min程度であれば特に問題はない。ただし、NSKの最大製作長さを超える軌道が必要な場合ではレールがつなぎ品となるので、つなぎ部の取付誤差には注意する必要がある。100m/minを超える送り速度の場合、潤滑剤には高速用の銘柄の選定と、適確な保守管理が必要であり、リニアガイドの取付誤差に注意して組み付けることが望まれる。取付誤差の影響とは、例えば図2に示すような平行度誤差がある場合、ベアリングはテーブル板によって拘束されているので、リニアガイドには荷重変動があるということであり、これが高速の場合、衝撃力となって作用し寿命を著しく低下させることがあるという意味である。
リニアガイドの運転時の温度上昇の具体例を、表1に示す。先に述べたように、リニアガイドではボールねじに比べて鋼球の移動速度が小さいことと、発生した熱が取付部を経て装置全体に熱移動する際の伝達面積が大きいことから、温度上昇が小さいことがわかる。リニアガイドを取り付ける機台がアルミ板のように異種金属で熱膨張係数が異なる場合には、両者間に温度差がなくても温度変化により、全体の変形やリニアガイドに過大な力がかかることもあるので、注意を要する。