リスクマネジメント

基本的な考え方

NSKは、全社リスクマネジメント(以下「ERM」)の目的を『全社的なリソースを効果的に活用し、NSKグループの企業理念の実現と経営目標の達成に関する不確実性の影響を管理すること』と定めています。ERMは、不確実性による影響(リスク)とその対応を管理の目的とする「リスク管理」と、発生した事件・事故(インシデント)への対応を管理の目的とする「インシデント管理」の二つから構成されます。

ERMの目的を達成するため、NSKは3線モデルに基づき、取締役会からグループ内各拠点を跨いだ管理体制及びガバナンス体制を構築し、その下、リスク管理とインシデント管理の運用が行われます。その詳細は以下のとおりです。

ERM体制

◆管理・ガバナンス体制

リスクに実際にさらされ、またはインシデントの発生場所となる製造・販売拠点等を第一線のリスク対応部門とし、リスク分野ごとにリスクやインシデントの管理責任を負う第二線のリスク管理責任部門を設置しています。また、CEOやCFOがリスク対応部門及びリスク管理責任部門によるリスクやインシデントの管理状況を監督できるよう支援するため、ERMを統括する部門としてリスク管理統括部門を設置しています。さらに、これら第一線及び第二線の活動状況については、第三線である内部監査部門が監査し、その有効性を評価する体制としています。

ERMにおける執行部門の中核には、CEOの諮問機関である経営会議を置いています。経営会議では、管理するべき重要なリスクの決定を行い、そこでの審議内容は取締役会にも報告される体制となっています。なお、経営会議において決定した管理対象リスクの内容やその対応状況、インシデントへの対応状況が定期的に取締役会へ報告される体制を構築しています。

全社レベルリスクの決定(リスクアセスメント)
リスク管理フロー
全社リスクマネジメント(ERM)体制
リスク管理体制

ERMの運用状況

◆リスク管理

グローバル各拠点を含め、年1回リスクアセスメントを実施しています。リスクアセスメントの開始に当たっては、CEOと各リスク管理責任部門の長(事業本部長及び機能本部長)のリスク認識が発信されます。これに基づき、リスク対応部門とリスク管理責任部門によりアセスメントが実施されます。残余リスクの発生可能性や影響度に応じてリスクの重み付けを行い、特に重要なリスクについては経営会議にて審議の上、管理対象リスクを決定します。経営会議の場では、ボトムアップで特定されたリスクとともに、経営者視点で特定される経営戦略上重要なリスク(新興リスクを含む。)についても議論されます。

管理対象リスクは層別管理され、経営会議にて決定した「全社レベルリスク」と、各本部や拠点で管理されるべきリスク(それぞれ「本部レベルリスク」及び「現場レベルリスク」)に区分されます。以後、これらのリスクに対する対応活動及びモニタリングを行います。全社レベルリスクについては、その対応状況が定期的にCEO及びCFOに報告され、取締役会にも定期的に報告されています。なお、期中に重要なリスクが発生した際には、新たに管理するべきリスクに追加しています。

◆インシデント管理

一定の報告基準に合致するインシデントについては、発生の都度、リスク分野ごとに割り当てられたリスク管理責任部門に初報が入る運用としています。特に重大なインシデントについては、CEOやCFOにも報告されます。以後、各インシデントへの対応計画が策定され、この計画が履行されるとともに、インシデントが収束するまでの対応状況が定期的に報告されます。

◆ERM研修

ERMのレベルアップや健全なリスクカルチャーの醸成のため、定期的なERM研修を実施しています。

ERM運用状況一覧
活動実施頻度備考
リスクアセスメント年1回期中に新たなリスクが発生したときは管理対象リスクとして登録
全社レベルリスクや重大インシデントのCEO/CFOへの定期報告月1回全社レベルリスクや重大インシデントの発生・対応状況について、リスク管理責任部門やリスク管理統括部門からCEOやCFOに報告。特に重要なものについては、CEOを議長とする各種委員会の場でも報告。
取締役会への報告年数回ERMの状況について、CEOやリスク管理統括部門の長から報告がされる。
ERM教育活動都度2026年4月には、CEOやCFOを含む役員研修会を実施。また、従業員向けのeラーニングも毎年実施(グループ28社約400名)

なお、上記のERMに加え、各業務プロセスにおいても個別のリスク管理を実施しています。例えば、製品企画から開発、量産に至る各プロセスでは、品質リスクを管理する仕組みとして独自の「NPDS(NSK Product Development System)」を運用しています。また、設備導入時には、安全面に関するリスクアセスメントを実施し、リスクの低減に取り組んでいます。

FY2026の重要リスク

リスク項目代表的なリスク内容対応策
1地政学リスク
  • 国際紛争による物流遮断や調達の難化、生産停止、原材料・エネルギー価格の高騰リスク
  • 各国の通商・経済安全保障政策が当社の収益を圧迫するリスク
  • サプライチェーンの可視化と各種代替手段の検討
  • タイムリーな情報収集とそれに基づく販売価格の調整や生産地変更の検討
2技術革新に係るリスク
  • 技術革新に伴う市場の変化や顧客の技術要求に開発対応が遅れるリスク
  • 中長期方針に基づく開発計画の管理・運営の徹底
  • オープンイノベーションやアライアンスの活用
3安全・防火および自然災害に係るリスク
  • 自然災害・パンデミック等へのBCP対応不備が操業に影響するリスク
  • 重大な労働災害が発生するリスク
  • 火災発生により操業が停止するリスク
  • 影響度分析を通じた優先づけと具体的対策の特定・実施
  • 重点拠点の管理体制強化と防止活動充実
  • グループ内教育活動の充実
4品質に係るリスク
  • 重大な品質問題の発生リスク
  • 品質保証体制の不備により問題への対応力が低下するリスク
  • 品質データの偽装、改ざんリスク
  • 過去案件の分析に基づく対応策の強化
  • 全社トレーサビリティシステムの導入による問題発生時の影響軽減
  • 情報共有と品質監査活動の充実、教育強化
5環境に係るリスク
  • 長期エネルギー削減施策の遅れが事業機会の逸失や企業価値毀損を招くリスク
  • 環境負荷物質の漏洩や排出基準超過が発生するリスク
  • エネルギー削減目標達成サイクルに基づく投資計画の実行
  • 重点拠点の管理体制強化と防止活動充実
6コンプライアンスに係るリスク
  • 各種法令や規制の変化への対応が遅れるリスク
  • グローバルな税務課題に関する対応力が不足するリスク
  • グループコンプライアンス体制を通じた情報共有、教育研修の実施
  • 国際税務対応リソースの拡充や親子会社間でのデータとリスク共有など税務マネジメント体制の強化
7人材・労務に係るリスク
  • グローバルに有能な人材の確保ができず事業拡大や戦略遂行に支障をきたすリスク
  • 働き方に対する価値観が多様化する中、人事諸制度、諸施策の見直しが遅れるリスク
  • 各国の労働関連法令に適宜対応できず、事業運営に支障をきたすリスク
  • 各国各地域や事業・機能の状況に応じた採用プロセスの強化とサクセッションプランニングの充実
  • エンゲージメント調査に基づくグループ内施策・アクションプランの策定と実施および啓発活動の強化
  • 各地域の人事部門との定期的情報交換とモニタリング、外部専門家との連携
8調達に係るリスク
  • 特定供給元への依存が円滑な調達に支障をきたすリスク
  • 代替品の検討、調達先の複数化、現地調達の推進
9DXや情報セキュリティに係るリスク
  • 基幹システムの導入に係る納期遅延とコスト増大リスク
  • サイバー攻撃や機密情報流出などの情報セキュリティリスク
  • プロジェクト管理の徹底と厳格な追加開発審査プロセスの構築
  • 計画的システム更新と定期的な脆弱性診断評価
  • 早期検知と対処能力の向上、早期復旧体制の強化
10中長期的な企業価値向上に係るリスク
  • 事業環境の想定外の変化により、中期経営計画の達成に支障をきたすリスク
  • 株主・投資家や従業員等ステークホルダーとの対話が不十分なことにより企業価値向上や外部評価に影響を与えるリスク
  • 計画の達成度のモニタリングと変化が生じた際の新たな対応策の策定と実行
  • 各ステークホルダーとのエンゲージメント活動の活発化や開示・発信のレベルアップ