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人とロボットが共生する世界へ一歩を踏み出す:NSKのアクティブキャスタ

各国では高齢化や労働者不足に直面しており、生産現場だけでなく、さまざまなシーンでロボットの重要性が増しています。これらの課題解決に、NSKの技術を活かしてどのように貢献するのか?

今回は、「協働ロボット」や「サービスロボット」向けの全方向電動車輪「アクティブキャスタ」の開発に取り組んでいるNSKエンジニアにお伺いしました。

アクティブキャスタ

プロフィール

本郷 康貴

本郷 康貴
新領域商品開発センター

松井 智亮

松井 智亮
新領域商品開発センター

NSKの「アクティブキャスタ」とは?

NSKのアクティブキャスタは人の近くで使用することを想定した電動車輪ユニットです。ロボットの「足」としてのイメージに近いかもしれません。サービスロボットが人の役に立つためには、人と同じ空間で動作し、人に配慮した動きをする必要があるため、スマートで静か、コンパクトなユニットに拘って開発しました。

現在、お客様にサンプルを納品し、アクティブキャスタを搭載したサービスロボットの開発が進められています。これらのロボットは近い将来、私たちの職場や日常生活で活躍することが期待されていて、NSKはお客様の支援と設計の最終化に取り組んでいるところです。

参考記事:滑らかな全方向移動を実現する「アクティブキャスタ」を開発

多様な場面や産業で活躍

本郷アクティブキャスタの開発には私は今年から参画しましたが、想像以上にさまざまな業界のお客様からご興味を持っていただいていて、広い可能性を持つプロダクトだと感じています。例えば医療業界や物流業界など、これまで私が仕事の中で関わりがなかったお客様の課題解決に取り組んでいて、気付きの多い新鮮な毎日です。日常生活やさまざまな仕事を支援するロボットの実現に貢献できることは少子化・高齢化など社会課題にも関連していて、とても広がりのあるプロジェクトだと感じています。

本郷 康貴

アクティブキャスタは、NSKの搬送アシストロボット(※)にも搭載する計画で、病院内のストレッチャー移動や、医療用品の運搬などに活用されています。我々開発チーム内には、病院で働く家族を持つメンバーがいて、その重労働ぶりをよく耳にしています。患者のケアは肉体労働を伴い、腰を痛めることもよくあると聞きます。自分の身近な家族や知り合い、ひいては社会に貢献するポテンシャルがある本プロジェクトに取り組むことに、非常にやりがいを感じています。

※参考記事:神奈川県「令和4年度新型コロナウイルス感染症対策ロボット実装事業」への参加

アクティブキャスタ

松井日本をはじめとする多くの国々では、高齢化が進み労働力が減少し、従業員を十分に雇うことができずに困っている産業がすでにあります。アクティブキャスタを使用したロボットによって、反復的な作業が自動化されれば、従業員の負担を減らすことができます。近い将来、こういった省力化のニーズはますます必要になるはずで、このようなロボットの導入は、企業の競争力の維持や拡大に役立つ可能性さえあると考えています。

また、移動に制限のある人々の支援にも応用できます。アクティブキャスタを使えば、旅先での移動を容易にするロボットスーツケースや、人にやさしい電動歩行器を開発することもできます。電動歩行器は、例えば自宅で椅子に座った時、邪魔にならない場所に自律的に移動し、必要なときに戻ってくるようにプログラムすることもできると思います。このような様々な活躍の場を想像し、使われ方を考えることはとても刺激的です。

松井 智亮

変化する社会で積極的な役割を果たす

本郷アクティブキャスタは、走行テストを重ねながら設計をブラッシュアップしている段階です。実験室では凹凸のある床や絨毯、段差やスロープなど、様々な路面環境を再現していて、アスレチックのような光景が広がっていますよ(笑) 。

アクティブキャスタ

現時点では性能とコストのバランスが課題になっています。アクティブキャスタは、1輪につきモータを2個搭載し、その回転速度差で操舵や走行を制御しているので、正確な制御性能を持たせつつコストダウンが必要です。NSKが電動パワーステアリング用ECUなどで培ったノウハウを活用しながら、必要な機能を見極めつつお客様が導入しやすい価格に調整しているところです。

NSK社内の部署や事業部の垣根を越えて、様々な分野のエキスパートの方々と協力しながら量産化を目指しています。あと1~2年くらいすれば、街中で偶然お目にかかるかもしれません。

松井全方向移動ができて、重量物も運べたり、坂道も登れるパワーもあれば、活躍の場が広がります。そのためにはパワーを生み出せるギヤを設計する必要がありますが、一方で、コンパクトなサイズ感に納めなくてはいけません。そこで、ギヤ配置の工夫が肝になってきます。また、高効率化や耐久性向上のために、NSKの強みである軸受やグリースの知見を活かし、アクティブキャスタをより魅力的なものにしていきたいと思っています。

NSKは100年以上前から軸受を作り続けているわけですが、いま、協働ロボットやサービスロボットなどの最先端分野と密接に結びついています。とても感慨深いことだと思います。たしかに考えてみれば、新幹線や高効率モータ、巨大風力発電機など、ベアリングやトライボロジーの技術がなければ作れないものがたくさんあり、NSKは社会に必要なものを作り、社会の発展を支えてきた会社なんだなと改めて思います。

社会の変化が加速している今、目の前に挑戦する機会がたくさんあるので、技術者としてはとても幸せなことだと思います。新領域への継続的な挑戦は、社内に前例も無く、独特の難しさはありますが、それに負けないくらいやりがいがあります。引き続き、お客様の声を聞きながら、社会の役に立つよう尽力していきたいと思います。

アクティブキャスタ