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安全・安心な船旅への第一歩
人道橋へのボールねじの採用

2021年7月に神奈川県・新港ふ頭の横須賀港と福岡県北九州市の新門司港を結ぶフェリー航路が開設されました。これらの港の旅客乗降用の人道橋に、NSKのボールねじが使われています。今回は、この受注獲得に携わったメンバーに話を聞きました。

プロフィール

長坂 理史

中国支社 副主務

野口 浩

中国支社 副主務

山本 晋平

産業機械技術総合センター
直動技術センター BS技術部 副主務

人道橋とボールねじ

横須賀港人道橋

野口NSKは、鉄道や航空機向けの製品では幅広いお客様とお付き合いがあるのですが、今回のように新航路開設に伴い人道橋が新しく建設される事例は数年に1度という頻度のため、そう多くありません。海面水位に合わせた大きな橋の高さの調整にボールねじが使われます。人道橋向けのボールねじは大手の競合他社が得意としており、NSKとしては、技術的な優位性をしっかりとお客様にアピールすることが大切だと考えました。お客様とコミュニケーションを重ね、使用環境や安全性を考慮した設計を検討。NSKの安全や技術への想いをお客様に納得いただけたことで、今回の受注を獲得することができました。

船接岸時に通路部を旋回させて位置を決め、ボールねじを用いて、乗降用の通路の高さの調節を行う

長坂今回、人道橋にNSKのボールねじを採用いただきましたが、ボールねじの特徴は、回転運動を直線運動に変換できることです。つまり、ボールねじを縦方向に置くことで、上下運動も可能になります。この上下運動を活かし、干潮時、満潮時で海面水位の高さに差があっても、乗船口に合わせて適切に橋の高さを上下し、調整することができます。
人道橋には、油圧ポンプを回して小さい力を大きい力に変換させる油圧式の装置もありますが、今回はボールねじを使った電動式の装置です。電動式になることで、油圧の油の交換などメンテナンスの手間が減ることにつながります。また、電動式は、橋が昇降するときだけモータを作動させるのでモータ使用の電気量が減り、省エネルギーにも貢献できます。

山本私は、普段、高精度なプラスチック製品を作り出すための射出成形機や、プレスによる圧力をかけることで加工を行うプレス機など、大きな荷重がかかるボールねじの設計を担当しています。今回の人道橋も人が安全に渡れるように大きな荷重を支える必要があるということで、設計を担当させていただきました。
今回の製品は、使用環境と安全性をより考慮しました。使用環境については海辺ということもあり、常に潮風にさらされますので、安全に製品を使っていただくためにも、さびへの対策が必要だと考えました。NSKの安全への想いをお客様へご説明し、理解していただき、製品の表面にさび防止の加工を施しました。他の用途でも同様の加工をすることはありますが、今回のボールねじは5mを超える長いものでした。この長さのボールねじを加工することは難しいので、品質も確保しながらどこまで実現できるかを工場と営業と相談しながら進め、加工方法を調整し、最終的にうまくカタチにすることができました。
安全性については、人が乗るということで、さらに考慮する必要がありました。万が一、何らかの影響で、ボールねじに不具合が出てしまっても問題ないように、安全機構を付けました。ボールねじだけでなく、装置全体にも安全機構を搭載することを提案し、より安全性を高めることにつなげました。

新航路開設という、めったにないタイミングでの受注獲得

野口今回の案件では、NSKがこれまで培ってきた製品や加工の技術を組み合わせて、お客様に納得いただける製品を提案できたと思います。人道橋を使う乗客の方々のことを考えながら、社内の各部門と絶対に採用していただきたいとの想いを一つにして、提案を進めてきました。受注に向けてメンバーで一丸となって取り組んでいましたので、NSKの製品を採用いただけて、非常に嬉しく思います。また、新航路が開設されて、私たちの製品が入った人道橋が無事動き出したことにもほっとしています。

長坂これまで、私は主にベアリングを担当していたので、今回ボールねじという精機製品の知識も得ることができ良かったです。この経験を活かして、今後はNSKの総合力をより発揮できるような提案をしていきたいと思います。また、NSKの製品は、人の目に入りづらい場所で使われることが多いですが、今回、人道橋という、より人の生活に身近な製品を納入できて、嬉しかったです。今後も、人や社会の役に立つところに使われる製品への提案を行い、NSKのことを世の中にアピールできるような案件に携われるよう頑張っていきたいと思います。

山本自分が設計したものを世に送り出すことができて嬉しいです。今回の案件は、人が乗るということで、安全性への影響を考えて、いつも以上に高い緊張感の中で、仕事に取り組みました。今後も、安全・安心な製品を世に送り出すという使命感と緊張感を持って一つひとつの仕事に取り組んでいこうと改めて思いました。