Micro-UT法を用いた高精度寿命予測(世界初)で転がり軸受の動定格荷重アップを実現

  • はくりの起点となる鋼材中の非金属介在物の大きさや量(統計データ)から、はくり寿命を高精度に予測する技術を世界で初めて確立
  • 基本動定格荷重を、はくり寿命2倍相当(最大)に最適化
  • 機械のメンテナンス頻度の低減や機械の小型化などを通し、カーボンニュートラル社会の実現へ貢献

日本精工株式会社(本社:東京都品川区、代表者:取締役 代表執行役社長・CEO 市井 明俊、以下NSK)は、鋼材中の非金属介在物の大きさや量(統計データ)から転がり軸受(以下“軸受”)のはくり寿命を高精度に予測する技術を世界で初めて確立しました。

本技術の活用により、軸受の基本動定格荷重を最適化し、高品質なNSK軸受が備える長寿命性能を生かす機械設計が可能となります。それにより機械のメンテナンス頻度の低減や機械の小型化などを通し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。NSKは今後、特定のお客さまへ本技術に基づく技術提案を開始し、標準タイプの軸受においても基本動定格荷重の最適化に繋げていきます。

開発の背景

NSK軸受には鋼材メーカーとともに改善してきた高品質の鋼材が使用されています。そのため、ISO規格に基づき計算されるはくり寿命値に対し、NSK軸受の実寿命は著しく長い傾向にあります。

カーボンニュートラル社会の実現に向け、NSK軸受の長寿命性能をお客さまの機械設計に生かして頂くために、高い精度で転がり疲れ寿命を算出できる技術が求められていました。

本技術の特長

1. Micro-UT法による非金属介在物管理の高度化

軸受の転がり疲れ寿命は鋼材中の非金属介在物の大きさや量に左右され、非金属介在物の大きさにはばらつきがあります。NSKは従来 *1 の3,000倍以上の体積の鋼材を1/5の時間で検査できる独自技術“Micro-UT法” *2 を工業的に実用化し、信頼性の高い非金属介在物の統計データを取得することが可能となりました。


Micro-UT法による非金属介在物管理の高度化
2. リアルデジタルツインアプローチで非金属介在物サイズに基づく軸受寿命計算手法を確立

NSKでは、非金属介在物を模擬する人工欠陥を軌道輪に設けた独自の回転試験法を確立しました。これにより様々な大きさの非金属介在物を起点とする はくり を狙い通りに再現することが可能となりました。


リアルデジタルツインアプローチで非金属介在物サイズに基づく軸受寿命計算手法を確立

さらに、人工欠陥周辺の応力を解析するシミュレーションにて試験結果を再現させ、はくり発生メカニズムを解明しました *3 。このリアルデジタルツインの成果とMicro-UT法による非金属介在物の統計データを用いることで、世界で初めて *4 、鋼材の非金属介在物の大きさに基づく はくり寿命計算手法を確立しました。


本技術の特長

本技術の効果

Micro-UT法を用いた高精度寿命予測により、NSK軸受の長寿命性能を従来よりも高精度に計算可能となりました。この計算手法を応用して、寿命計算のパラメータである基本動定格荷重を最適化していきます。例えばラジアルころ軸受では、基本動定格荷重を はくり寿命で2倍相当へアップさせることが可能となります。

基本動定格荷重を最適な値に見直すことで、お客さまがNSK軸受の長寿命性能を機械設計に生かせるようになります。これによりお客様の機械メンテナンス頻度の低減や機械の小型化が期待でき、カーボンニュートラル社会の実現への貢献が期待できます。

  • *1:当社における従来の管理方法
  • *2:Micro-UT(Ultrasonic Testing)法:非破壊検査である超音波探傷法
  • *3:国立大学法人九州大学 松永久生教授とのオープンイノベーションによる成果
  • *4:当社調べ

NSKについて

NSKは、1916年に日本で最初の軸受(ベアリング)を生産して以来、100年にわたり軸受や自動車部品、精機製品などのさまざまな革新的な製品・技術を生み出し、世界の産業の発展を支えてきました。1960年代初頭から海外に進出し、現在では30ヶ国以上に拠点を設け、軸受の分野で世界第3位、また電動パワーステアリング、ボールねじなどにおいても世界をリードしています。

企業理念として、MOTION & CONTROL™を通じて円滑で安全な社会に貢献し、地球環境の保全をめざすとともに、グローバルな活動によって、国を越えた人と人の結びつきを強めることを掲げています。2026年に向けてNSKビジョン2026「あたらしい動きをつくる。」を掲げ、世の中の期待に応える価値を協創し、社会への貢献と企業の発展の両立を目指していきます。

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