工作機械主軸用精密単列円筒ころ軸受「ロバストライド™(ROBUSTRIDE™)」

2026年3月
産業機械技術総合開発センター
精密特殊軸受技術部 精密軸受技術室

1. はじめに

近年、脱炭素化の潮流により、工作機械にも省エネルギー性能が求められるようになってきた。高速で回転する工作機械主軸の軸受の潤滑には、微量の潤滑油を含んだ圧縮エアを吹き付けるオイルエア潤滑を用いることが多い。この圧縮エアが消費する電力は切削加工中の工作機械が消費する電力のうち約10~20%を占めるとも言われ、圧縮エアの削減は省エネルギー化の課題となっている。このため、軸受の潤滑に圧縮エアを用いないグリース潤滑のスピンドルを採用することが、省エネルギー化の一つの手段として見直されてきている。このような背景からNSKでは、グリース潤滑における性能を向上させた主軸の自由側用の精密単列円筒ころ軸受「ロバストライド™」(図1)を開発したので紹介する。グリース潤滑の自由側円筒ころ軸受には耐久性や高速性などの性能が求められ、ロバストライド™はそれらの性能を向上させることによりグリース潤滑のスピンドルにおいて幅広く対応できることを目指して開発した。

図1 工作機械主軸用精密単列円筒ころ軸受ロバストライド™(ROBUSTRIDE™)

図1 工作機械主軸用精密単列円筒ころ軸受ロバストライド™(ROBUSTRIDE™)

2. 構成、構造、および仕様

ロバストライド™は、ころ案内形式のPEEK樹脂保持器を採用したことで、現行品と比較してころ両脇に大きな空間を生み出している(図2)。これにより多くのグリースをころ転走面の近傍に堆積させることができ、更にグリース封入量を現行品より50%多くすることが可能となったことで、グリース潤滑における種々の性能向上を果たしている。

図2 慣らし運転後のグリースの堆積状況の比較

図2 慣らし運転後のグリースの堆積状況の比較

3. 特徴
3.1 グリース寿命の向上

ころ案内保持器を採用し、潤滑を必要とするころ近傍により多くのグリースを堆積させることができるようになったことで、転がり接触面や摺動部へ基油が届き易くなり潤滑性が向上、グリース寿命が最大60%向上した。図3は現行品とロバストライド™のグリース寿命を評価した一例で、1,000時間の耐久試験を行った後の外輪内径面へのグリースの付着状況の写真である。図4はそのグリース量を示しており、ロバストライド™は現行品に比べて2倍以上のグリースが残存している。また残存量のほか、油分離率や鉄摩耗紛量などの評価結果からグリース寿命の向上を確認している。

グリース寿命の向上により、グリース潤滑主軸の信頼性向上や軸受の交換頻度低減に貢献できる。

図3 耐久試験後の外輪軌道面の残存グリース

図3 耐久試験後の外輪軌道面の残存グリース

図4 耐久試験後の外輪軌道面の残存グリース量

図4 耐久試験後の外輪軌道面の残存グリース量

3.2 許容回転数の向上

グリースによる潤滑性が向上したことに加え、保持器の耐久性を向上したことによりグリース潤滑における許容回転数も最大約20%向上した。

3.3 グリース慣らし運転時間の短縮

グリース潤滑のスピンドルを組み立てた直後に急激に回転数を上げて連続運転すると、グリースの撹拌熱によって焼き付き損傷が発生する。このため、低速回転から段階的に回転数を上げていき、軸受内部の余剰グリースを撹拌抵抗にならない位置に徐々に排出させる慣らし運転が必要となる。

ロバストライド™はころ両脇に空間があり、軸受内部の余剰グリースをスムーズに排出させることができる。これにより、慣らし運転中のグリースの撹拌による発熱が抑えられ短時間で慣らし運転を完了させることができる。図5は現行品とロバストライド™の慣らし運転時の外輪温度を示しており、ロバストライド™は慣らし運転中の発熱が抑えられ、冷却のための停止時間がないことがわかる。

※スピンドル組立て時に行う慣らし運転

図5 慣らし運転時の昇温と慣らし運転時間

図5 慣らし運転時の昇温と慣らし運転時間

4. 用途

ロバストライド™はマシニングセンタや旋盤の主軸の自由側に適用できる。

なお本製品は、はグリース潤滑だけでなく現行品と同様のオイルエア潤滑でも使用することができる。

5. おわりに

ロバストライド™はグリース潤滑での信頼性を高めたことで、工作機械の省エネルギー化や環境対策の選択肢の一つである主軸のグリース潤滑化に貢献することができる。当社はこれからも、持続可能な社会に向けた革新的な軸受技術の開発に挑戦し続けます。