風力発電機用次世代高負荷容量円すいころ軸受
2026年3月
産業機械技術総合開発センター
ころ軸受技術部 ころ軸受第二技術室
1. はじめに
地球温暖化や気候変動の深刻化に伴い、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーの一つである風力発電が注目され、その需要は年々拡大している。発電効率を向上させるため、風力発電機は大型化・洋上化が進んでいるが、その結果、建設・輸送コストやメンテナンス費用の高騰が課題となっている。
このため、増速機には軽量化が求められていることから、軸受においても小型化が必要となり、必然的に軸受の負荷容量が低くなるという問題がある。また、増速機の設計では薄肉化が近年のトレンドとなっており、全体的な剛性の低下が進んでいる。その結果、増速機の変形により軸受に局所的な負荷やミスアライメントが発生しやすく、損傷のリスクが高まっている。したがって、風力発電機用増速機に搭載される軸受(図1)には、高信頼性(高負荷容量化)と軽量化の両立が重要な課題となっている。
このたび、NSKでは従来比で約25%の高負荷容量化と約30%の軽量化を両立させた、次世代高負荷容量円すいころ軸受を開発した。
図1 風力発電機の増速機に使用される軸受
2. 開発品の技術概要
円すいころ軸受は通常、荷重負荷時に接触端における過大な接触面圧の発生を防止するため、転動体または軌道輪のいずれか、あるいは両方にクラウニングが施される。従来は単一半径のクラウニング形状であり、荷重条件によって接触面圧が不均一になりやすいことが課題であった(図2)。一方、風力発電機の運転状況は風況によって変化するため、風力発電機用軸受において、実用上の広範囲な荷重条件を想定しておく必要がある。
図2 従来のクラウニング形状における不均一な接触面圧分布
本開発品では、転動体に単一半径と対数形状を組み合わせた複合形状クラウニングを採用した(図3)。広範囲な荷重条件で接触端の過大面圧を抑制しつつ、転動体の長さ方向に均一な面圧分布を確保するため、あらゆる条件においてシミュレーションを行い、クラウニング形状の最適化を図った。従来のクラウニング形状は一つのクラウニング半径を持つ形状であるのに対し、開発したクラウニング形状は複数の形状の組み合わせとなっている。
また、生産性を落とさずにこの複雑なクラウニング形状を実現させる加工技術を開発し、適用した。
図3 従来クラウニング形状と開発クラウニング形状との比較
3. クラウニング形状の最適化
クラウニング形状の設計には、荷重条件、ミスアライメント、軸受すきま、ころ寸法などのパラメータを考慮し、MLMI(Multi Level Multi Integration)法による非ヘルツ接触解析を用いて最適化した。従来品と開発品にて、転動体のクラウニング形状が接触面圧分布に及ぼす影響を、軽荷重(P/Cr※=0.19)、中荷重(P/Cr=0.32)、重荷重(P/Cr=0.615)の3条件で比較した結果を以下に示す。
従来クラウニング形状の接触面圧の分布はいずれの条件でも不均一な分布が見られ、軽荷重では形状が変化する中央部とクラウニング部の境界で面圧が大きくなる。中荷重では端部での過大な接触面圧が発生し、重荷重では過大な接触面圧が大幅に増加する(図4)。一方、開発クラウニング形状の面圧分布は端部での過大な接触面圧が大幅に抑制されており、いずれの条件においても転動体の長さ方向に均一な接触面圧分布となっている(図5)。これにより、負荷容量を従来比で約25%向上させることができ、2倍以上の長寿命化を実現している。
※P:動等価荷重、Cr:基本動定格荷重
図4 従来クラウニング形状の接触面圧分布
図5 開発クラウニング形状の接触面圧分布
4. 耐ミスアライメント性能
軸受の取付誤差や軸のたわみ等の影響で内輪と外輪が傾いた状態(ミスアライメント)で使用されると軸受に作用する面圧が増大し、軸受寿命の大幅な減少に繋がる。耐ミスアライメント性能を比較するため、ミスアライメント条件下における開発品の寿命を計算し、従来品との寿命比として示した(図6)。なお、実用上許容できる内輪と外輪の傾き角のことを耐ミスアライメント性能と呼んでいる。開発品は従来品に対して耐ミスアライメント性能が向上しており、いずれのミスアライメント条件においても従来比2倍以上の軸受寿命となる。
図6 従来品と開発品の耐ミスアライメント性能の比較
5. 高負荷容量化による軽量化
従来品では、高負荷時に過大かつ不均一な接触面圧が発生することを回避するため、軸受サイズを大きくする必要があった。一方、開発品ではクラウニング形状の最適化により、接触面圧を均一化することで上記課題を解決したため、従来品と同サイズの軸受を使用することが可能となった。その結果、従来品と同等の使用条件において、約30%の軽量化が見込まれる(図7)。
図7 開発品による軽量化効果
6. おわりに
NSKは、風力発電機の建設やメンテナンスのコスト削減に貢献し、風力発電機の大型化・洋上化を支える「風力発電機用 次世代高負荷容量円すいころ軸受」を開発した。
本製品は、転動体のクラウニング形状を最適化することで、従来品に対して耐ミスアライメント性能を向上させ、従来比約25%の高負荷容量化と約30%の軽量化を実現した。
本製品は欧州と中国市場向けに販売を開始しており、本製品の販売を通じて、風力発電機の高信頼性・軽量化へ貢献していく。