eVTOL(大型ドローン)向けガスタービン発電機用軸受

2026年1月
産業機械技術総合開発センター
精密特殊軸受技術部

1. eVTOL市場の動向

eVTOLのような次世代エアモビリティには、広大な「空」の活用により、地上交通インフラが抱える都市部の渋滞による経済的損失低減や救命救急・災害救助分野での活躍が期待されています。更に過疎化問題を抱える地域における持続可能な交通手段の構築や観光産業の活発化など、様々なユースケースでの活用が検討されており、世界的に大きな市場となることが予想され、社会実装に向けた過渡期を迎えています。

2. eVTOLの電動推進システムと航続限界

eVTOLの電動推進システムは、自動車のEV車のようにバッテリーと推進モーターというシンプルな構成の全電動タイプの機体開発が現状では活発に行われていますが、現時点のバッテリー技術でのeVTOLの航続距離は約200 km程度であると言われています。この課題の一つのソリューションであるレンジエクステンダーとして、ガスタービン発電機によりバッテリーの電源容量をカバーするハイブリッド推進システムをもつeVTOLが開発されています(図1)。ガスタービン発電機はレシプロエンジンと比べておよそ10倍のパワーウェイトレシオ(出力荷重比)を持っている点でeVTOL向けのレンジエクステンダーの現実解と期待されています。

図1 eVTOLの電動推進システム

図1 eVTOLの電動推進システム

3. 転がり軸受に求められる性能

eVTOLに搭載されるガスタービン発電機は小さいながらも大きなエネルギーを生み出す必要があるため、必然的にdmn250万以上の高速回転で運転されます。前述のように「軽いこと」が求められるeVTOLにとって、地上と同じような転がり軸受の運用(給排油ポンプ、大きな給油タンクを付帯する)は困難です。そのため、転がり軸受にはdmn250万以上の高速性能を持ち、潤滑油量削減下でも信頼性を確保することが求められます(図2)。

※軸受の高速回転性能を示す指標(転動体ピッチ円直径[mm]×内輪回転数[min-1]) 

図2 ガスタービン発電機の機体への搭載イメージ

図2 ガスタービン発電機の機体への搭載イメージ

4. 転がり軸受の高速性能と潤滑方法

転がり軸受の高速性能を向上させる手段として、本開発品は「軸受自身が低発熱仕様である(自己発熱が小さい)こと」に着目しました。この点においては工作機械用主軸などで採用されているロバストシリーズ(https://www.nsk.com/jp-ja/products/super-precision-bearings/precision-angular-contact-bearings/)が該当し、低発熱な設計仕様が確立されています。

潤滑油は軸受の機能面(軌道面と玉、保持器の案内面など)への潤滑と冷却を兼ねています。適切な箇所に適量の油を供給し“潤滑”する一方で、軸受内部へ過度に潤滑油を滞留させず、効率的に排出させ“冷却”を阻害しない給排油構造であることが重要です。

ガスタービン発電機などの高速軸受に採用される既存技術の潤滑方式として“アンダーレース潤滑”と“ジェット潤滑”があります。eVTOL向けガスタービン発電機への採用には、それぞれに高圧・多量の供給油が必要、潤滑構造が複雑等の課題を持っており、軸受の高速性能を阻害しない新たな潤滑機構の確立が必要となります(図3)。

図3 アンダーレース潤滑とジェット潤滑

図3 アンダーレース潤滑とジェット潤滑

5. 開発品の特徴

開発品は、内輪外径面が高速回転時に発生するエアカーテンの制約を受けずに、軸受内部へ適量(潤滑・冷却がバランスする)の潤滑油を供給可能にするため、ジェット潤滑と比較して1/4の供給量となり、かつ動力損失を2/3に抑える効果が得られます。また、遠心力を利用して軸受内部に潤滑油を供給する機構のため大きな油圧が必要なく、供給量も削減できることから、潤滑油のタンクも小さくでき、省スペース化・軽量化にも貢献します(図4、図5)。

図4 開発品イメージ

図4 開発品イメージ

図5 eVTOLにおける本軸受による効果試算

図5 eVTOLにおける本軸受による効果試算