ロボティクス領域向けアクチュエータ

2026年7月
事業企画本部 ロボット事業部 ロボット商品開発室

1. 背景と課題

近年、労働力不足・高齢化といった社会課題への対応策として、ヒューマノイドロボットへの期待が急速に高まっています。ヒューマノイドロボットはその形態を問わず、人間と同じ作業空間で人間に近い動作が可能であるため、製造・物流・介護・サービスなど幅広い分野での活用が見込まれており、世界的な金融・投資機関も市場の急成長を予測しています。

ヒューマノイドロボットの関節や可動部に搭載されるアクチュエータには、産業用ロボット向けに従来求められてきた高精度・高信頼性に加え、新たな要件が課されます。第一に、小型・軽量化です。関節や可動部に搭載されるアクチュエータがコンパクトかつ軽量であることは、自然な動作の実現と省エネルギーに直結します。第二に、高バックドライバビリティです。外力を受けた際にアクチュエータが受動的に追従する特性であり、人との接触を伴う動作での安全性確保に不可欠です。第三に、機電一体化です。モータ・ドライバ・センサを一体構造に統合することで、配線の簡素化と設計自由度の向上を同時に実現します。

NSKはこれまで産業用ロボット向けに軸受・ボールねじ等の実績を積み重ねてきました。これらのコア技術を基盤として、上記3要件を満たすアクチュエータの開発に取り組みました。

2. 開発品の概要

NSKは、ロータリーアクチュエータおよびリニアアクチュエータの2製品を開発しました(図1)。本開発は、電源・制御・オートメーション分野で世界的に高い実績を有するDelta Electronics, Inc.(デルタ電子)との協業によるものです。NSKが軸受・ボールねじおよび減速機を組み合わせた機構設計を、デルタ電子がフレームレスモータ・エンコーダ・モータコントローラ・ソフトウェアプラットフォームをそれぞれ担当し、両社の強みを融合させることで、個別調達では実現困難なコンパクト性と高性能を達成しました。

図1 ロータリーアクチュエータ(左)とリニアアクチュエータ(右)

図1 ロータリーアクチュエータ(左)とリニアアクチュエータ(右)

2.1 ロータリーアクチュエータ

関節部への適用を主目的としたロータリーアクチュエータでは、NSK独自の高機能軸受の採用により、外形φ80 × L79 mm・質量1.0 kg以下というコンパクトな寸法のなかで、繰り返しピークトルク110 N·m、トルク重量比 約110 N·m/kgを実現しました。また、配線・配管を関節内部で引き回せるφ18 mmの中空穴を設けており、ロボットの配線レイアウト設計の自由度向上に貢献します。さらに、負荷トルクを推定することでバックドライバビリティを改善しています。

2.2 リニアアクチュエータ

ロボットの直線動作部位への適用を目的としたリニアアクチュエータでは、逆作動性に優れた高負荷対応ボールねじを採用しています。ボールねじは摩擦損失が小さく高効率な動力伝達が可能であり、高いバックドライバビリティを実現しています。また、高密度・高放熱レイアウトの採用により、外形φ55 × L200 mm・質量0.9 kg以下の小型軽量構造で最大推力3,900 N、最大推力重量比 約4,300 N/kgを実現しています。

2.3 共通仕様

両製品ともに、デルタ電子の高効率モータコントローラ(変換効率97%以上)を内蔵した機電一体構造を採用しています。また、EtherCAT®※2 / CAN対応の高速通信インタフェースを内蔵しており、ロボット全体のリアルタイム制御に対応します。主要仕様を表1に示します。

※2 EtherCAT®はBeckhoff Automation GmbH(ドイツ)の登録商標・特許技術

表1 開発品の主要仕様

表1 開発品の主要仕様
3. 導入効果

本開発品の導入により、ヒューマノイドロボットに対して以下の効果が期待されます。小型・軽量化により関節および構造設計の自由度が拡大し、自然な動作特性を持つロボットの実現に貢献します。また、NSKの軸受・ボールねじが有する高効率伝達特性により消費電力を低減するとともに、軽量化によってバッテリー駆動時間の延長にも寄与します。

4. 今後の展望

現在開発済みの中型(ロータリー:110 N·m、リニア:3,900 N)に加え、今後は小型・大型のラインアップを段階的に拡充し、ロボットの各部位への最適配置とともにロボット設計者が柔軟に設計できるソリューションの提供を目指します。

顧客との共同検証・試作評価を目的としたサンプル提供を順次進め、2028年の市場投入を計画しています。またアクチュエータに搭載する軸受・ボールねじのラインアップ拡充も並行して進め、システム提供とコンポーネント供給の両面からロボティクス市場の発展に貢献してまいります。

参考文献

1) 日本精工株式会社、「ロボティクス領域に向けたアクチュエータを開発」、プレスリリース、2025年11月6日:https://www.nsk.com/jp-ja/company/news/2025/robotics-actuators/