ウェビナー開催レポート

2025年12月25日

状態監視とAIで設備保全の未来を切り拓く!予知保全の最新アプローチ

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2025年7月17日、「【設備診断のプロが支える】根本原因まで特定する予知保全の最新アプローチ ~成功事例から学ぶ、AI × 設備診断エキスパート × NSKの知見で実現する次世代の予知保全~」というウェビナーを開催しました。本レポートでは、当日のウェビナー内容から、重要なポイントをご紹介します。

本ウェビナーは、企業向けセミナーを企画・運営するマジセミ株式会社の協力のもと開催されました。

製造業の課題と予知保全の重要性

まず、製造業が直面する事業環境の変化と、予知保全がなぜ注目されているのかを解説します。急速な市場変化や設備の老朽化、環境対応の必要性が高まる中、予知保全は生産安定化と効率化の鍵となります。

製造業を取り巻く環境は大きく変化しています。経済産業省のデータによると、産業インフラの半数以上が設置から50年以上経過し、設備の老朽化が進行しており、設備にはレジリエンスの強化が求められています。

また、市場や顧客からの生産安定化ニーズが高まり、ダウンタイムがサプライチェーン全体に影響を及ぼすリスクも増大しています。さらに、カーボンニュートラルをはじめとする環境経営の要求も強まっており、持続可能なものづくりの実現が不可欠となっています。

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【資料:P4 製造業を取り巻く環境】

こうした課題に対応するため、予知保全が注目されています。予知保全は、設備の状態を常時監視し、故障の予兆を捉えて最適なタイミングで保全を行う手法です。一方、従来の予防保全では、定期的な部品交換を行うため、まだ使用可能な部品の廃棄ロスが生じるほか、まれに発生する突発故障を防ぐことも困難です。予知保全は、振動データを活用して異常を早期に検知し、計画的な保全を実施することで、これらの課題を効果的に解決できます。

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【資料:P5 設備保全手法の比較】

セミナー参加者を対象に実施したアンケートでは、現在の保全活動の取り組み状況について尋ねました。結果、予防保全を実施している企業が最も多く、次いで予知保全や事後保全、分からないという回答も見られました。このように、保全手法を整理することで、自社の保全目的や実施体制を見直すきっかけとなります。予知保全の導入によって、設備のダウンタイムの削減や部品廃棄ロスの低減が実現し、生産の安定化やコスト削減につながります。また、部品を寿命まで使い切ることで、カーボンニュートラルの達成目標にも貢献できます。

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【資料:P6 予防保全と予知保全】

予知保全は、省人化・省力化にも極めて効果的です。リモート監視により、巡回点検にかかる工数を削減し、危険箇所への立ち入りを減らすことで、作業者の安全性が向上します。また、設備の状態をデータで可視化することにより、製品品質の向上にも寄与します。

AIとエキスパートによるアクショナブル・インサイト

次に、予知保全の課題を解決する「アクショナブル・インサイト」の仕組みをご紹介します。AIによる異常検知と設備診断エキスパートの精密分析が連携し、根本原因の特定から具体的な保全アクションまでを提案します。

従来の予知保全には課題があります。例えば、状態監視システムが異常を検知しても、具体的な保全アクションが不明確で、現場の保全担当者が対応を判断できないことがあります。また、異常を検知して現場に急行しても問題が見つからず、状態監視システムへの信頼が得られないケースも少なくありません。

NSKの「アクショナブル・インサイト」は、これらの課題を的確に解決します。AIによる傾向監視で異常の兆候を検知し、設備診断エキスパートが周波数解析などの精密診断を行い、現場とのコミュニケーションを通じて根本原因を特定します。これにより、具体的な保全アクションを提案し、現場の意思決定を力強く支援します。

NSKの状態監視ソリューションは、4つの強みがあります。1つ目は「メーカーとしての強み」で、軸受などの製品開発や生産で培ってきた振動に関するノウハウと状態監視技術のノウハウを融合し、高度な状態監視サービスを提供しています。2つ目は「豊富な実績」で、風力発電や石油化学分野での導入実績に加え、ISO機械状態監視診断技術者(カテゴリー4)による専門的な状態監視の実施が可能です。3つ目は「柔軟な監視を実現するラインナップ」で、機械保護システムからワイヤレス巡回監視まで対応し、オンプレミスやクラウドのいずれにも対応できます。4つ目は「アクショナブル・インサイト」で、AIとエキスパートの連携による高精度な診断とアクション提案を実現しています。

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【資料:P8 NSK状態監視ソリューションの4つの強み】

NSKは1916年創業の日本初の軸受メーカーで、国内シェアNo.1、世界シェアNo.3を誇っています。2021年に回転機械の状態監視システム市場におけるパイオニアであるB&K Vibroをグループに迎え入れ、状態監視技術をさらに強化しました。これにより、風力発電(40,000台以上のCMS装置、12,000基以上のリモート監視)や石油化学(10,000台以上のCMS装置)での実績を基に、鉄鋼、製紙、半導体などの幅広い産業へ展開しています。

アクショナブル・インサイトの具体例として、クーリングタワーの監視事例があります。AIが振動データから異常を検知し、エキスパートが周波数解析で軸受の損傷を特定しました。現場との連携でグリスアップを提案し、突発停止を防止しました。このように、AIとエキスパートの知見を組み合わせることで、保全業務の効率化と信頼性向上を実現しています。

実際の導入事例から見る予知保全の効果

続いて、実際の導入事例を通じて予知保全の具体的な効果をご紹介します。コンプレッサーや熱処理ラインでの振動データ活用事例をもとに、予知保全がどのように現場の課題を解決しているかを解説します。

NSKの工場におけるコンプレッサー室の事例では、にコンプレッサーのモーター軸受の異常を防ぎ検知し、メンテナンスタイミングの最適化を目指しました。状態監視装置と17個の振動センサーを設置。NSK独自の診断指標値によって異常を早期に検知し、エキスパートが周波数解析でモーター軸受の異常を特定しました。「アクショナブル・インサイト」としてグリスアップを提案し、突発停止を未然に防止しました。これにより、異常の可視化と早期発見が実現し、工場の信頼性が向上しています。

もう一つの事例は、NSK工場の熱処理ラインです。高温環境下のポンプやモーターの異常による突発停止防止と、危険エリア作業の削減を目的としました。ワイヤレスセンサーを11箇所に設置し、クラウドプラットフォーム BKV Beyondでリモート監視を実施。AIとエキスパートの知見を組み合わせることで、異常を発見できる体制を構築しました。その結果、点検作業が不要となり、作業者の安全性向上とメンテナンスの効率化を実現しています。

これらの事例から、予知保全は異常の早期発見にとどまらず、根本原因の特定と具体的なアクション提案によって、現場の課題を効果的に解決しています。NSKのアクショナブル・インサイトは、AIとエキスパートの連携により、保全業務の信頼性を高めています。

まとめ:状態監視が切り拓く次世代設備保全の展望

最後に、状態監視を活用した予知保全が製造業の未来にどう貢献するかをまとめます。AIとエキスパートの知見を融合したソリューションが、持続可能なものづくりをどう実現するのか、その可能性を紹介します。

予知保全は、データに基づく適時な保全で、サイクルが長く回数が少ない点が特徴です。部品を寿命まで使い切ることで、カーボンニュートラルに貢献します。NSKの状態監視ソリューションは、老朽化対策として異常の早期検知を可能にし、効率化では不要な点検や部品交換を削減。安全性では危険エリア作業を減らし、作業者を守ります。

NSKの強みは、100年以上の軸受製造の知見と、B&K Vibroの状態監視技術の融合にあります。AIによる異常検知とエキスパートの精密診断を組み合わせたアクショナブル・インサイトは、現場の意思決定を支援し、実効性の高い予知保全を実現します。製造業の厳しい環境下で、NSKのソリューションは持続可能なものづくりを支え、企業の未来を切り開きます。