日本精工株式会社
コーポレート・コミュニケーション部
生成AIを活用した品質トラブル参照アプリケーションを自社開発し運用開始
- 過去の品質トラブルデータ約4,000件をアプリで可視化・要約。専門知識や経験に依存せず、直感的な操作で社員の情報収集の効率化を実現
- 生成AIを本格的に活用し、社内向けアプリケーションを開発したのはNSKとして初
- 国内の社員約5,000名以上を対象に25年6月より運用を開始
- 本アプリ活用を通じて、より一層の品質向上とお客様対応の迅速化を推進

本アプリケーションの概要図
1.アプリ概要
今回自社開発し、運用を開始したのは、蓄積された品質トラブルデータのグラフによる可視化と生成AIを用いた要約機能を備えた、社員向けアプリケーションです。
従来の品質トラブルデータは、専用のデータベースやレポート形式で管理されていました。データ自体も定まった形式を持たず専門性が高く、因果関係を読み解くことが難しい状況でした。当社では、2022年度からスタートした現中期経営計画において、デジタル技術の活用を通じた経営資源の強化を掲げており、競争力の源泉である品質・技術の一層の強化を進めています。その一環として、製品開発時や工程設計時、その検証の際に生じた品質トラブルやノウハウに関するデータをテーブル構造で蓄積する取り組みを推進してきました。今回のアプリでは、例えば製品開発時のリスク要因を社員が調べる際、グラフによる可視化と生成AIによる要約文が提示されます。これにより、個々の社員の製品や業界に関する専門用語の知識レベルに依存することなく、誰もが調べたいデータに容易に到達し、かつ情報要約の生成まで約30秒で完了できるよう設計しています。
運用のスタートにあたり、2025年6月より、約4,000件の品質トラブルデータが詰め込まれたアプリを設計・製造・品証メンバーを中心とした国内5,000名以上の社員に提供しました。今後、営業・物流メンバーなどNSK製品のライフサイクルに関わる様々な分野の社員にも提供・利用者を拡大し、NSKの品質マネジメントの強化推進とともに、お客様第一の品質実現に寄与できるよう活用してまいります。(品質マネジメント | 日本精工 (NSK))
なお、本アプリケーションは、当社専用の環境に構築された生成AIを活用しており、セキュリティリスクに対する安全性も確保しています。また、生成AI特有のハルシネーション*1 などリスクを踏まえたAI品質コントロールや業務運営ルールを策定し運用しています。
*1 ハルシネーション:まるでAIが幻覚を見ているかのように、もっともらしい事実とは異なる情報を作り出してしまうこと
2.アプリ開発について
NSKでは、2023年には文章の生成や情報検索といった用途を主とした生成AIの社内利用を開始しております。今回自社開発したアプリは、当社にとって生成AIを初めて当社の専門的な業務・領域に活用した事例です。
2024年10月から、テーブル構造の品質トラブルデータに関して生成AIの技術検証を開始しました。アジャイル開発の手法を導入し、機能設計から正式導入までは約半年という短期間で実現しました。直感的なUIを設計するとともに、データ構造を維持できる形で生成AIの使い方を工夫することによって、利用する社員の経験や知識レベルに左右されず調べたいデータにたどり着けるようになっています。社内の業務プロセスにマッチした生成AIを実用化しました。
3.今後について
本アプリケーションは、今後国内のみならず、海外拠点も含めた活用を予定しています。社員のニーズに応じた形で、お客様にこれまで以上に迅速で高品質な製品が提供できるよう、回答精度の向上や調べたいデータの検索性向上などの機能拡充も予定しています。
今後もNSK社内の様々なデータを活用した生成AIの実用化を加速させ、 中期経営計画 | 日本精工 (NSK) に基づいて、デジタル技術を活用した経営資源の強化を通じ、持続可能な社会の発展に貢献し必要・信頼される企業を目指してまいります。
■NSKについて
NSKは、1916年に日本で最初の軸受(ベアリング)を生産して以来、100年以上にわたり軸受や自動車部品、精機製品などのさまざまな革新的な製品・技術を生み出し、世界の産業の発展を支えてきました。1960年代初頭から海外に進出し、現在では約30ヶ国に拠点を設け、軸受の分野で世界第3位、またボールねじ、電動パワーステアリングなどにおいても世界をリードしています。
企業理念として、MOTION & CONTROL™を通じて円滑で安全な社会に貢献し、地球環境の保全をめざすとともに、グローバルな活動によって、国を越えた人と人の結びつきを強めることを掲げています。2026年に向けてNSKビジョン2026「あたらしい動きをつくる。」を掲げ、世の中の期待に応える価値を協創し、社会への貢献と企業の発展の両立を目指していきます。