日本精工株式会社(本社:東京都品川区、代表者:取締役 代表執行役社長 大塚 紀男、以下NSK)は、農業機械のHydraulic Static Transmission(以下HST*)に使用されるスラスト玉軸受として、従来比2倍以上の長寿命を実現した「長寿命高信頼性保持器付きスラスト玉軸受」を開発しました。NSKは、本製品により農業機械の信頼性向上に貢献し、2016年にHST用途のスラスト玉軸受の売上として10億円を目指します。
* HST:油圧ポンプと油圧モータを組み合わせた静油圧式無段変速機構。油圧ポンプのピストンに接する斜板の角度を変化させることによって、変速を行なう。このピストン摺動部面にスラスト玉軸受が使われる。
開発の背景
世界的な人口増加に伴う食料やバイオ燃料等の需要の増加により、農業機械の需要が拡大しています。トラクターやコンバインをはじめとする農業機械では、スムーズな操作のための無段変速化、作業性を高めるための高出力化が進んでいます。これに伴い、農業機械の変速機では、HSTが主流となっていますが、エンジンの高出力化によりこのスラスト玉軸受にかかる負荷が増してきております。これに伴い、軸受への長寿命・高信頼性の要求が高まってきています。
本製品は、HST用のスラスト玉軸受として、以下の優れた特長により高出力化に対応した長寿命・高信頼性という市場の要求にお応えします。
製品の特長
以下の長寿命化技術の採用により、従来の2倍以上の寿命を可能にしました。
- ◆材料技術
- 従来品では、大きな荷重が掛かるとはく離が発生することがありました。本製品は内部疲労に強いEP鋼を内外輪に、表面疲労に強い特殊熱処理を内外輪と玉に採用しました。
- ◆高信頼性保持器の採用
- 従来の保持器には、玉の遅れ進みにより、大きな保持器荷重と繰り返し応力が発生し、鉄製保持器が破損することがありました。この対策として、繰り返し応力に強い材料のプラスチック製保持器を用いることで、高荷重下における保持器の信頼性をさらに高めました。