2019年08月05日

技術力と好奇心から生まれる メイド・イン・ジャパンのおもちゃ開発 後編:「おもちゃショー」で輝く技術力

技術力と好奇心から生まれる メイド・イン・ジャパンのおもちゃ開発 後編:「おもちゃショー」で輝く技術力

左から、ヨーヨーマスターTAKA氏、有限会社ミツミ製作所 代表取締役社長 山田賢一氏、NSKマイクロプレシジョン株式会社 代表取締役社長 石井俊和氏

今年6月、「東京おもちゃショー2019」で初披露された二重振り子「カオスメーカー」。2018年のジャイロスコープ「TOKYOジャイロ」に続き出展の目玉となったこの商品は、モノづくりに挑む3社の共同開発によるものでした。その魅力を探るべく、最新技術でおもちゃをつくることの意義、モノづくりの精神などを伺いました。

プロフィール

長谷川 貴彦

ヨーヨーマスターTAKA
株式会社そろはむ(スピンギア) 代表取締役 長谷川貴彦

ヨーヨー元世界チャンピオン、秋葉原にあるヨーヨーショップスピンギアオーナー。ヨーヨーのデザインはもちろん、スポーツ競技用投げこまやひねりこま、ジャグリング用こまのディアボロ、ハンドスピナーなど回るおもちゃ全般のプロデュースを手がけ、"回転おもちゃ研究家"を自認しています。ヨーヨー、こま、けん玉など進化した伝承遊び=スキルトイをおもちゃ業界に仕掛けるプロデューサー。メディアへの出演も多数あり。
URL:https://spingear.jp/

山田 賢一

有限会社ミツミ製作所 代表取締役社長 山田賢一

1920年創業の葛飾区の金属加工町工場。
時計職人だった曾祖父が時計部品やおもちゃの歯車といった金属加工業で開業し、現在では主に自動車、医療機器、半導体関連などの精密金属加工を手掛けています。
開業当時の曾祖父の想いと「おもちゃのまち葛飾のプライド」を胸に先端の加工技術を駆使して、現代に蘇るメイドインジャパントイを通じて、子供たちへモノづくりの大切さを伝えていければと日々努めています。
URL:https://mitsumi-seisakusyo.co.jp/

石井 俊和

NSKマイクロプレシジョン株式会社 代表取締役社長 石井俊和

ベアリングでは日本一のシェアを誇る日本精工(NSK)グループの中で、パソコン、船舶、釣具、歯科治療用医療機器向けなどの小さなサイズのベアリングを専門に開発・製造・販売しています。「クールジャパン」の具体化のために、ハンドスピナー(製品名:サターンスピナー)、ヨーヨー用ベアリング、こまのベアリング制作にも携わっています。
URL:https://www.nskmicro.co.jp/

技術を結集した「TOKYOジャイロ」が晴れ舞台へ

山田 ヨーヨーの制作で培った技術やノウハウをもとに「TOKYOジャイロ」を共同制作することになったわけですが、まずは、「東京おもちゃショー」が大きな目標となりましたよね。

長谷川 取り組みを進めるうえでの、一つの締め切りみたいなものです(笑)。「半年後におもちゃショーがあるから準備しましょう」というのが、毎年のサイクルになってきました。無理のない範囲でこれからも続けていきたいですね。

山田 3社共同企画となった第1弾は、おもちゃショーで発表した「TOKYOジャイロ」でした。NSKマイクロプレシジョンさんの高精度ベアリングは、当然すべての部品が日本製で、ミツミ製作所は製造を担当しています。長時間回転するジャイロスコープによって、多くの人に「ジャイロ効果」を体感してもらうことができました。

石井 回転時に音がしないのも革新的でしたね。製造段階になると、日本精工(NSK)の本社に出向いて商品を見てもらい反応をリサーチしています。かつて私は、その本社で経理を担当していたのですが、私のことを知らない若い社員が増えてきて、私をおもちゃ屋さんだと思っている人も多いみたいです(笑)。その皆さんの勘違いを活かして、試作品を持ち込んではお客様目線で評価してもらっています。真面目に「遊び」のことを考えているという感じのやり取りがとても楽しい。自分自身が楽しむためにも、さまざまな部署の方や回転の専門家の意見をいただきながら、いたって真面目におもちゃづくりをしています。

TOKYOジャイロ

ベアリングを魅力的に伝える「カオスメーカー」

長谷川 今年発表した「カオスメーカー」も、石井さんがNSKさんの本社でリサーチをしてくれたことで、商品の魅力がグンと上がりました。もともとは、ミツミさんの社員(武田秀明さん)が試作機をつくってくれたんですよね。

山田 そうです。工場にあるパーツを使って振り子をつくってみたというので、居酒屋で長谷川さんに見てもらったところ、「これは面白い!」となって盛り上がりました。それから改良して長く動く二重振り子になり、さらには石井さん、長谷川さんのアイデアを取り入れ、技術者たちも興味を持つような動きをする「カオスメーカー」が誕生したわけです。

石井 NSKのベアリングがいくつも採用され、持ち運びもできるとなれば、当社の技術をアピールするためのツールとして最適です。実際に会社の受付に置いてみると、みんな「何だろう?」と触りますからね。大人から子どもまで楽しめる商品になりました。

石井 俊和

カオスメーカー

アイデアを形にするモノづくりの挑戦は続く

長谷川 「TOKYOジャイロ」や「カオスメーカー」は、デスクトップトイとして人気を集めるでしょう。僕自身、ベアリングを机の上で回して、それをずっと見ているのが大好きです(笑)。

山田 ハンドスピナーを初めて見たときは、正直なところ「それで?」と思いましたが、大変なブームになりました。そういう意味では、モノづくりでは先入観をなくすことが大切だと思います。正解は誰にもわからないわけですし、先入観で決めてしまうのは経営者として危険なことでしょう。それから、モノづくりを楽しむだけでなく、ヒットするための仕掛けも必要です。これまで3社でつくった商品は、すべてテレビで取り上げられていますね。

石井 商品が話題になった結果としてお客様に喜んでもらえると、モノづくりのメーカーとしてこれほど嬉しいことはありません。ベアリングは家の中に約100個、自動車の中にも100~150個使われおり、陰で私たちの生活を支えるような部品ですが、そんなベアリングを世の中の人に知ってもらいたい。ベアリングが大好きな長谷川さんの要望に応えることにも、私たちは喜びを感じています。ヨーヨーが回る時間を競う競技があって、NSKのベアリングを使ったヨーヨーが世界記録(当時・21分21秒)を樹立したこともあります。我々がつくったものを活用してもらい、なおかつ喜んでもらえる。そんな感動をみなさんと一緒に、これからも届けていきたいですね。

山田 ミツミは社員10人以下の町工場ですが、面白い仕事ができています。ヨーヨーの世界チャンピオンや、NSKマイクロさんのような大きな企業と仕事ができるのは幸せなことです。これからのモノづくりにおいて、言われたことをやるだけでは会社を維持できないでしょう。時間やお金がかかっても、自分たちから仕掛ける戦略を打ち出し続けていくべきですね。

長谷川 アイデアは常にあるので、ベアリングに関わるモノを一緒につくり続けましょう。ゼロから何かをつくることはできませんが、今ある技術を組み合わせることで新しい商品が生まれます。その発想とお二人の力を借りながら、世の中に刺さるモノづくりができるといいですね。

長谷川 貴彦