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2.2 アンギュラ玉軸受

アンギュラ玉軸受はラジアル荷重と一方向のアキシアル荷重を負荷することができ、アンギュラコンタクト玉軸受と呼ばれることもあります。
外輪と玉の接触点、内輪と玉の接触点を結ぶ直線は軸受のラジアル方向に対して、傾きを有しており、この傾きを接触角(α)と呼びます。接触角のため、ラジアル荷重を負荷したときにアキシアル分力が発生します。アキシアル分力を負荷するため、組合せて2個以上で使用されます。
一般に、鋼板の打抜き保持器が用いられますが、接触角30°以下の高精度の軸受には、 主にポリアミド成形保持器が使用されています。
アンギュラ玉軸受は主に組合せて使用します。

接触角とそれらの相関

アンギュラ玉軸受保持器の種類

鋼板打ち抜き保持器
ポリアミド樹脂(ナイロン46)保持器
銅合金もみ抜き保持器
120℃以上で長期継続使用する場合は、外内輪(および玉)に特殊熱処理(寸法安定化熱処理)を施した軸受を使用します。

組合せ軸受の形式と特徴

組合せ軸受とは、2個以上の玉(または ころ)軸受を組合せて一対にしたものです。
アンギュラ玉軸受2個の場合について、下記に示します。
図例 形式 特徴
ラジアル荷重 アキシアル荷重 モーメント荷重
背面組合せ形
DB
(例)7208A DB
◯(両方向)
(DFに比べ、作用点距離a0が長いため)
正面組合せ形
DF
(例)7208A DF
◯(両方向)
並列組合せ形
DT
(例)7208A DT
◯(一方向) -
(アンギュラ玉軸受2個組合せの中では) ◎:負荷大 > ◯:負荷やや大 > -:対象外

軸受メーカー別の組合せ記号

列数 Fig. NSK A社 B社 C社
2 DB
DF
DT
3 DBD
DBT
DFT
DTT
FFB TBT
DFD BFF TFT
DTD FFF TT
4 DBB DTBT FFBB QBC
DFF DTFT BBFF QFC
DBT
DFT
DTT
DBTT FFFB QBT
DFTT BFFF QFT
DTTT FFFF QT
注意:3個以上の場合、軸受メーカーによって記号は同じでも内容が異なります。

複列アンギュラ玉軸受

複列アンギュラ玉軸受は、2個の単列アンギュラ玉軸受を背面組合せ(DB)にして、内輪および外輪をそれぞれ一体とした構造です。
ラジアル荷重、両方向のアキシアル荷重、モーメント荷重を負荷することができます。
  • 同一外内径寸法の単列アンギュラ玉軸受2個組合せ品に比べ、幅寸法が薄くなっています。
  • 単列アンギュラ玉軸受の接触角は15°、25°、30°、40°(4種類)であるのに対して、複列アンギュラ玉軸受(5xxx)の接触角は25°(1種類)です。
  • 標準は鋼板打抜き保持器を採用しています。
  • 主に、ポンプ、電気モーター、ブロワーで使用されます。
5306(複列)と7206ADB(組合せ)の比較例
5306 7206ADB(M)
内径寸法, mm 30
外径寸法, mm 60
幅寸法, mm 23.8 32
接触角, deg 25 30
基本定格荷重
kN
動定格 29.6 36.5
静定格 21.1 29.5
許容回転数
min
グリース潤滑 7,100 8,000
油潤滑 9,500 11,000

類似の複列アンギュラ玉軸受5xxxと3xxx

軸受形式シリーズ記号 3xxx(5xxxとの比較)
外内径・幅寸法 同寸法
動定格荷重 小さい
内部設計 外輪 (5xxx:入れ溝なし)入れ溝あり
内輪 (5xxx:軌道溝2列)1列
玉数 多い
玉径 小さい
接触角 大きい
(※1)他社品には、3xxxと5xxxにて、同一の内部設計の場合があります。
(※2)他社品には、外観に入れ溝がなく、内輪を分割している場合があります。
3xxxの場合、軸受に荷重のかかる領域(負荷圏)が入れ溝にかからないよう、配慮しなければなりません。

4点接触玉軸受

  • 内輪が2分割されている 内外輪分離形の単列アンギュラ玉軸受です。
  • ラジアル荷重と両方向のアキシアル荷重を負荷することができます。
  • 接触角は35°であり、純アキシアル荷重またはアキシアル荷重の大きい合成荷重を受けるのに適しています。
  • この軸受1個で、DF(正面組合せ)またはDB(背面組合せ)のアンギュラ玉軸受を置き換えることができます。
  • 一般に、銅合金もみ抜き保持器が使用されています。
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