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9.1 グリース潤滑

主流の潤滑方法としてグリース潤滑があげられます。油潤滑に比べ、グリース潤滑は密封構造の簡略化、交換周期が長いことから、コストメリットがあるとともに、飛散・滴下が少ないなどのメリットがあります。

グリース潤滑

グリース潤滑
グリース潤滑は潤滑油に比べて、複雑な潤滑設備(ポンプ、 クーラ等)が不要です。また、少量で使用できるため、広い用途で使用されています。すなわち
  • 使いやすく、安価に潤滑できる利点があります。
  • 転がり軸受ではその80%に潤滑グリースが使用されています。
深溝玉軸受のグリース封入例
グリースの組成
潤滑グリースは、潤滑油中に増ちょう剤を分散させて、半固体状にし、目的に応じた添加剤を加えたものです。
  • 基油(Base oil、約70~95%)
    潤滑の役割を担います。一般グリースは鉱油が主流であり、高温/低温性能、長寿命などが求められる場合は合成油が用いられます。
  • 添加剤(Additives、数%)
    基油の働きを助けます。酸化防止剤、耐摩耗剤、極圧添加剤、さび止め剤等が使われます。
  • 増ちょう剤(Thickener、 約5~30%)
    基油を保持し、半固体状の性質を担います。

グリース充てん量(封入量)

ハウジング内へ充てんするグリース量は、軸受の回転速度、ハウジングの構造、空間容積、グリース銘柄、雰囲気などによって異なります。
一般的な目安は、以下のとおりです。
まず、軸受内部(下図 ①部)に十分なグリースを詰めます。このとき、朱点線で示す外輪つば内径面と保持器案内面(保持器外径面)にもグリースを押し込むことが必要です。
次に、ハウジング内部の軸および軸受を除いた空間容積(下図 ②)に対して、
1/2~2/3(許容回転数の50%以下の回転のとき)
1/3~1/2(許容回転数の50%以上の回転のとき)
程度の量を充てんします。
ただし、運転条件によっては、たびたびグリース補給または交換する必要があります。このような場合は、補給側にグリースセクター設置などを配慮する必要があります。
グリース充填図

グリースの補給間隔(ラジアル玉軸受・円筒ころ軸受)

高品質グリースであっても、使用時間の経過とともに性状は劣化し、潤滑性機能が低下するため、適宣、グリースを補給しなければなりません。
  • 軸受温度が70℃を越える場合は、15℃上がる毎に補給間隔を半減させます(70℃未満の場合、補正は不要です)
  • 荷重により下表を基に補正します。
P:動等価荷重 C:基本動定格荷重
P/C ≦ 0.06 0.1 0.13 0.16
補正係数 1.5 1 0.65 0.45

密封玉軸受のグリース寿命

単列深溝玉軸受にグリースを封入し、シールまたはシールドで密封した玉軸受のグリース寿命は下式で推定できます。
t:平均グリース寿命(h)
n:軸受回転速度(min-1
Nmax:グリース潤滑時の許容回転数(min-1
・・・非接触シールのカタログ値
T:軸受運転温度(℃)
P:軸受荷重(N)C:基本動定格荷重(N)
  • グリース寿命計算の適用範囲
    T < 70℃のとき T = 70℃
    (はん用グリース:-10~110℃程度で使用されることが多い鉱油系グリース)70℃ ≦ T ≦ 110℃
    (ワイドレンジグリース:-40~130℃程度の広い温度範囲で使える合成油系グリース)70℃ ≦ T ≦ 130℃
  • 0.25 ≦ n/Nmax ≦ 1 (n/Nmax < 0.25のときn/Nmax = 0.25)
  • P/C ≦ 0.1
はん用グリース
ワイドレンジリース
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