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DXを通じて、一人ひとりの力を最大化する

5000名参加の研修!超大型研修から始まるNSKのデジタル変革(DX)の旅。NSKは、今後どのように変わっていくのか?
デジタル変革の実現に向けた3つの取り組み、“マインドセット”、“体感”、“エンゲージメント”について、デジタル変革本部4名に伺いました。

プロフィール

倉本 康子

倉本 康子
産業機械軸受技術センター
産機軸受開発室
兼 デジタル変革本部 変革推進室
主務

吉松 修

吉松 修
デジタル変革本部 変革推進室
兼 技術開発本部 デジタルツイン推進室
副主務

森川 奈々

森川 奈々
デジタル変革本部 変革推進室
主務

岡田 敦彦

岡田 敦彦
デジタル変革本部 変革推進室

チェンジ・マネジメントで「三日坊主で終わらないDX」を目指す

倉本 康子

倉本私たちは、デジタル変革を実現していくにあたって、“マインドセット”、“体感”、“エンゲージメント”の3つのフィールドに分けて取り組みをしています。今日はそれぞれのフィールドの担当者から取り組みを紹介します。突然ですが、皆さん、新しい習慣を身に着けようとして、三日坊主で断念した経験はないでしょうか。数日間ならできるかもしれませんが、長期間にわたって継続するのは難しい、長年の習慣や“マインドセット”なら尚更です。

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、仕事のやり方や考え方さえも根本的に変える必要があるのですが、そのためには、三日坊主で終わらないように取り組む必要があります。このことを念頭に置いて、マインドセット変革に向けて私が取り組んでいる専門領域はいわゆる“チェンジ・マネジメント”※です。
数年間だけでなく、将来にわたって維持できるDXを実現するためにはいったい何が必要なのか、ありたい未来を実現するために探索することに注力しています。

持続可能なDXを実現するために、まずは効果的なビジネスプロセスを生み出すための考え方について理解を深めることが不可欠です。NSKでは、日本の社員のおよそ半数にあたる約5000人を対象としたデザイン思考のワークショップから取り組みを始めました。このワークショップでは、デザイン思考の考え方を応用してビジネスアイデアを提案し、洗練させる方法を実践的なアプローチで学びました。単に「実現できるかどうか」だけでなく、「誰にどんな価値をどうすれば素早く提供できるか」という“人中心” の “迅速な” 価値提供の視点が重要なポイントとなります。
多くの社員にとっては、デジタルはまだ遠い存在かもしれません。そこで、私たちは、このようなワークショップを通じて、社員のマインドに刺激を与えていきたいと考えています。これらの取り組みを浸透させて、全社的に「三日坊主で終わらないDX」を実現していきたいと思っています。

NSKのデジタル変革

※チェンジマネジメントとは:組織を「現状」から「ありたい姿」へと移行させ、変革による混乱や抵抗を最小限に抑えます。また、変革の影響を受ける人々が、いち早く新しい状態に適応できるように支援します。

一歩気軽に踏み出す

森川次に私からは「体感」についてお話します。DXで見過ごされがちな点は、必ずしも巨大なデータベースや複雑なシステムを作ることだけがDXではないということだと思います。私たちの日常業務の中には、デジタルの自動化によって恩恵を受けられるものや、活用しきれていないデータがたくさんあります。全員が小さなことから始められるんです。

本郷 康貴

例えば、今までシステム化しきれていなかった日常点検をセンサーを使って自動化するようないわゆるIoTや、アンケートのような文書をAIを使って分析・可視化することまで多岐にわたっています。変革推進室ではIoTハンズオン研修を始め、誰でも・気軽に・小さくデータ活用を試せるクラウド環境の準備にも着手しています。新しい技術に触れて、業務を効率化したり、新たな知見を得るきっかけにしてほしいと考えています。

いまはまだ取り組みを始めたばかりなので、具体的な活動に落とし込めていない社員も多いと思っています。そのため、私はDXがもたらす効率化や業務削減の効果を従業員に直接体験してもらえるように、簡単な成果をひとつずつ積み上げていくことを重視しています。デジタル技術を使ってまずは目の前の小さな課題から解決してもらうことで、従業員の理解を深め、デジタルの活用の意欲を高めていきたいと思っています。

人と人がつながり、自律的にDXが広がる体制を目指す

岡田私からは「エンゲージメント」についてお話したいと思います。
デジタル変革本部の重要な役割のひとつとして、ボトムアップDX活動があります。ボトムアップDXは、業務現場の社員による自発的なDXの取り組みで、私たちはその取り組みを通じた人材育成やDXの広がりを目指しています。私たちのもとには、業務で直面している課題や、繰り返し作業の自動化などの業務負荷軽減について、デジタルをどう活用したらいいかといった社内からの相談が日々寄せられています。

岡田 敦彦

そういった相談に対して、私たちは「伴走支援」という形で取り組んでいます。伴走支援とは、単に職場の特定の課題に私たちが直接対処するのではなく、課題を抱えている社員に主体となって課題を解決してもらい、必要に応じて私たちがサポートするという進め方です。具体的には、方法の提案、ツールや類似事例の紹介、具体的なシステムのサンプルを作成、レクチャーなど、課題整理から具体的な改善の取り組みにわたって支援を行っています。

このアプローチをとることで、DXの重要な問題のひとつである、訓練を受けた人材や有資格者の不足を解決することができると考えています。私たちの目標は、伴走支援でまずは一部の社員に教え、指導し、その社員がまた他の社員に教え、指導できるようにすることで、デジタル技術の活用方法について積極的に学び、創造し、共有する「デジタル市民」とその輪を社内に増やすことです。つまり、私たちが関わって解決できた課題の関係者が、彼らを中心としてデジタルを周囲に広めていく。そうすることで、これまでは社内でデジタルシステムを作る側と使う側が別々でしたが、今後は、システムを作る人と使う人が一体となることを目指しています。こういうシステムが欲しい、と思った社員が誰でも自らそのシステムを作り上げられる、そんな姿を実現したいと考えています。

知識とデータの豊かな環境づくり

吉松私からもエンゲージメントについてお話します。
私はデータ分析の普及を担当しており、非常に重要な業務だと考えています。以前は技術部に所属し、機械学習を使った転がり軸受の診断を研究していました。この研究で重要だったのは、収集したデータを分析して知見を得たことで、有益な問題設定ができたことです。そのためには、問題に関する専門知識やデータ収集環境、データ分析の知識や計算環境などが必要でした。

吉松 修

データ分析に必要な要素を整え、データから有益な知識を得る文化が広まれば、NSKの強みをさらに活かせると考えています。NSKの強みの一つは、製品内部の物理現象に基づく専門知識を持っていることです。しかし、データ分析に必要な要素はまだ十分に整っていません。そのため、知識や計算環境を整えてデータ分析を普及させ、全社でデータから知見を得る機会を増やす取り組みをしています。これにより、もっとお客様に貢献できると確信しています。

たとえば、データ分析の普及のためには,前述のとおりマインドセット醸成や当事者による問題解決の伴走支援などの活動を行っています。他にも、社内のデータを分析できるプログラミング環境をワンクリックで利用できるようにしました。この計算環境は、データ分析のハードルを下げる役割を果たし、実際の業務や社内教育でも活用されています。

NSKのDXにおいては、会社の強みをお客様への提供価値に活かすことが重要です。そのため、データから知見を得るための仕組みづくりをしています。問題やデータを共有して分析し、知見を展開することをエンジニアだけでなくNSK全体で習慣化・徹底できれば、より多くの価値を生み出せると信じています。

DXと一人ひとりの力で新たなNSKへ

倉本昨年度からNSKのデジタル変革の旅が本格的にスタートしました。社内には様々な仕事をする方がいますが、“マインドセット”、“体感”、“エンゲージメント”の3つのフィールドで一人ひとりに合ったサポートをしていきます。一人でも多くの社員に自らデジタルの力で課題解決をしていく「デジタル市民」を目指していただき、一緒にこの変革の旅を共にして欲しいと思っています。

NSKは90年代においてデジタルを早くから業務に取り入れ、工場の生産現場や営業活動、技術設計、研究解析など、さまざまな場面で活用してきました。現在はデジタルの最前線にいるとは言えないかもしれませんが、私たちNSKは変革に積極的に取り組むスピリットを持っていると信じています。

私たちの取り組むDXは、いわば企業の変革(CX=コーポレートトランスフォーメーション)そのものです。新たなNSKに向けて、デジタルという新たな手段を手に入れ、社員一人ひとりが力を発揮し、さらなる企業理念の実現と社会の支援に向けて進んで行きたいです。