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精機製品・技術レポート:NSKリニアガイドの吸振性

一般に滑り案内に比べて転がり案内は、摩擦係数が小さいことにより減衰性で劣るということが言われている。しかし、反面、摩擦係数の速度による変化が少ないこと、十分な剛性をもち単体で保証されていること等の優れた機能特性をもっているため、重切削機械にも使用されるようになっている。そこで、リニアガイド単体の減衰性に関して、滑り案内と4点接触及び2点接触タイプのリニアガイドとで比較実験を行なったので、以下に紹介する。
リニアガイド自身では、移動方向に拘束力をもたないため、鋼板の曲げを利用したクランク型の板ばねを取り付けて加振した(図1)。減衰性の評価は、ダンピングファクターを求めることで行なった。その結果を図2に示す。これにより、同一摩擦力におけるダンピングファクターξの大きさから、減衰性の評価は、以下のとおりである。

  • 1) 滑りガイド > 4点接触タイプ > 2点接触タイプ
  • 2) 同一剛性(59㎏f/μm)を有する領域(図2 部)で比較すると、ダンピングファクターの比は、次のようになる。

なお、滑りガイドについては、しゅう動材にNSKポリメックス(自己潤滑性樹脂)を用い、無潤滑で試験した。4点接触、2点接触というのは、鋼球と案内溝との接触点を表わす(図3参照)。NSKリニアガイドは、レールとベアリングの片側2条のゴシックアーチ溝の間隔を微小量Δだけオフセットした設計になっている。LYシリーズでは、中予圧以上(Z3, Z4)の予圧を与えると、亜4点接触となり、接触点Aのように小接触長円を発生させることにより、有害な摩耗を生じさせることなく、吸振性の向上をねらう設計となっている。
以上から、工作機械向に設計されたLYシリーズは、滑り案内には及ばないものの、適度な“滑り”を加味した溝設計により、2点接触タイプのガイドに比べ高い減衰性をもっていることがわかる。
なお、LH, LSシリーズは、通常の使用では4点接触にならない設計になっており、吸振性よりも低摩擦力が要求される用途に向いている。

図1:リニアガイドの吸振性測定装置&図2:ダンピングファクターの比較&図3:鋼球と案内溝との接触点