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精機製品・技術レポート:NSKリニアガイドによる高速(高精度)化への課題

  • 剛性が高く、かつ各方向にバランスが良いこと
  • 適度な摩擦を持ち、減衰性を有すること
  • 高い運動真直性など、高精度であること
  • 長寿命で信頼性が高く、耐衝撃性に優れること

高速・高精度化をねらう工作機械向けに特に要求されるリニアガイドの重要性は以下である。

ここでは、4列のゴシックアーク溝を有しており、玉が溝と4点で接触する、いわゆる‘4点接触構造’とした点にほかの2点接触タイプとの大きな違いがあるNSKリニアガイド“LYシリーズ”(以下、単にLYと称する)を例として、前記特性を概説し、その後、そのLYをベースとして、さらなる高性能化を目指してNSKが開発した新工作機械用リニアガイド“LAシリーズ”について紹介する。

1. 剛性

送り案内機構の剛性は、機械の精度を左右するきわめて重要な機能である。LYは玉が溝と4点で接触するため、負荷を受ける点の数が多く、4溝で荷重を支えるので剛性が高い。また、接触角を45゜とすることによって、上下左右の各方向に等剛性としている。

2. 摩擦と減衰性

転がりは一般に吸振性が小さいと言われている。

LYは4点接触とすることによって、適度な摩擦を与えて案内系に制振力を生じさせるように狙った設計となっており、滑りには及ばないものの、2点接触品に比べると明らかに高い減衰性を示す実験結果が報告されている。

このため、外部からの振動力に対してダンピング機能を持つ、サーボモータの速度脈動の吸振性がある、サーボモータの発振抑制が作用するためサーボゲインを高めやすくスティックモーションが小さい、などの利点がある。

詳細はこちらへ NSKリニアガイドの吸振性

3. 精度

高精度の原点は測定精度にあると言っても過言ではない。ゴシックアーク溝は溝位置測定用ころが溝と2か所で接触するのでその位置が安定し、高精度な測定を容易に行なうことができるので、精度が保証され優れた機能が発揮されることになる。

一般に、転がり要素はその宿命として転動体の通過に伴う周期成分を有している。リニアガイドの場合、玉が負荷圏と非負荷圏を出入りするごとにベアリングの姿勢に周期的な変動が生じ、これを玉通過振動と呼んでいる。超精密な用途や、精度を必要とする点がリニアガイドから離れている場合、変位が拡大されて問題となり、これを改善するためにベアリングの溝端部にクラウニングと称する緩やかな傾斜を設けている。

図1は、図2の測定装置を用いて玉通過振動と測定し比較したものである。LYは2点接触品に比べて各接点での負荷を小さくできるので、負荷の変化に伴う玉通過振動も小さくすることができる。

図1:玉通過振動測定データ&図2:玉通過振動測定装置

詳細はこちらへ NSKリニアガイドの玉通過振動

詳細はこちらへ NSKリニアガイドの高精度化技術開発

4. 寿命と耐衝撃性

LYは負荷を支える点の数が多く、このことは剛性に対すると同様、負荷容量・寿命に対しても有利である。また、高剛性であることによって、同じ剛性を得るための予圧を小さくできるので、過大予圧となる懸念がなく信頼性が高い。

機械には、突発的に衝撃荷重が作用してしまうことがよくある。このときリニアガイドが致命的なダメージを受けるようであれば安心して使うことはできず、その意味で耐衝撃性もきわめて重要である。

ゴシックアーク溝は、特に衝撃荷重のような大荷重が作用した場合、それを4溝で分散して受けるため高い耐衝撃性を発揮できる。

5. 新工作機械用リニアガイド “LAシリーズ”

LYは、玉を溝と4点接触させることによって高剛性を得るとともに、適度な摩擦を与えて案内系に制振力を生じさせるように狙った設計となっている。その反面、摩擦が2点接触タイプに比べて大きいことが欠点となる場合もある。

新工作機械用リニアガイドLAシリーズは、LYをベースに、4点接触の特徴を活かしながら摩擦を低減するなど、さらに高性能なリニアガイドを意図し、下記を狙いとして設計・開発した製品である。

  • 1) レールの両側面に各3列の溝を配置することなどにより、剛性・負荷容量ともにLYの約1.5倍とする。
  • 2) 4点接触と2点接触とをバランス良く組み合わせることにより、摩擦はLYの1/2程度とする。
  • 3) 取り付け周り寸法は、LYなど市場で多く使われているものと同一とする。
  • 4) 基本コンセプトはLYと同様であるが、技術の発展を背景に、いくつかの改善を加える。

表1に、LYとLAシリーズの主な特性を、代表形番について比較したものを示す。

表1:LAとLYの特性比較例(#45長形重予圧相当品)

詳細はこちらへ LAシリーズ ( KB)