メインビジュアル

精機製品・技術レポート:ボールねじのこじりと取付誤差

図1:トラニオン付きナット

転がり軸受に比較して、ボールねじは鋼球の列数が多いので、ナットとねじ軸が相対的にこじられている場合には、ナット内に不均一な負荷分布が生じ、過大なトルクや振動を引き起したり、早期に摩耗やはくりを発生することがある。

(1)ラジアル負荷、モーメント負荷の影響
ボールねじは、その構造上軸方向力を支持する要素である。したがって、外力としてのラジアル力やモーメントがボールねじに直接かからないように案内系で支持するか、図1のようにナットにトラニオンなどを設け、こじり力が作用しないような工夫をする必要がある。

(2)取付誤差の影響
ボールねじの取付精度が悪いと、ナットとねじ軸がこじられて、内力として大きなラジアル力やモーメントを発生することとなる。このためボールねじの取付けの際には、ナットハウジング、支持軸受ハウジング及び案内の相互の心出しをテストバーなどを用いて充分に行う必要がある。

さて、取付誤差がボールねじに与える影響を検討するために、図2のようなボールねじ系を考えてみよう。このモデル系は、ねじ軸が一端固定、他端自由に支持され、ナットは、剛性無限大な案内系に支持されている。このとき、ねじ軸のラジアル剛性は固定軸からの距離の3乗に反比例し、自由端側ではかなり小さなものとなる。このためナットとねじ軸の心違いがあっても、ねじ軸のひずみによってほとんど吸収されてしまい、ナットとねじ軸間に発生するラジアル力は極めて小さいものとなる。これに対し、固定端側ではラジアル剛性が大きいので、心違いをねじ軸のひずみにより吸収できず、ナットとねじ軸間に大きなラジアル力を生み出すこととなる。
このモデルでは、ねじ軸自身のラジアル剛性の影響を示したが、支持軸受や案内系の剛性に対しても同様なことがいえる。

このように、ナットとねじ軸間の相対的こじり量は、取付誤差とそのまま同一ではなく、ナット、ねじ軸間相互の支持剛性とボールねじの剛性との関係により決定され、一般的には取付誤差より小さなものとなる。また、この例からもわかるように支持剛性の強い付近の取付誤差を充分管理することが必要となる。
取付誤差の許容値は、支持系の剛性やボールねじ仕様あるいは要求性能により変わるので、一般的な値として示すことは難しい。ただし、上述のような関係を考慮して概略値としていえば、精密級の場合には、

傾き誤差 1/2,000(目標1/5,000)以下
心違い 20μm以下

図2:ボールねじ系のモデル

程度に管理することが望ましい。
ラジアル負荷、モーメント負荷や取付誤差によるボールねじへの影響は、支持系の剛性がわかれば、その力学的関係から、各鋼球の負荷分布を算出し推定することができる。
(その2)には、その計算例を報告する。