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ボ-ルねじで、新たな「止める・止まる」をカタチに
Part 2 ~製品設計編~

Part1 ~戦略編~ はこちら

NSKは、2018年3月から埼玉工場で、2020年1月からNSKステアリングシステムズ株式会社 総社工場 赤城製造部で、「電動油圧ブレーキシステム用ボールねじ」の生産を開始しました。本製品に関わった各部門の社員のエピソードをご紹介します。今回は、製品設計の担当者に本製品に込めた想いなどを聞きました。

電動油圧ブレーキシステム用ボールねじ
「電動油圧ブレーキシステム用ボールねじ」

プロフィール

中島 正人

中島 正人
自動車事業本部
自動車技術総合開発センター
ステアリング&アクチュエータ技術センター
アクチュエータ技術部 副主務

電動ブレーキのニーズの高まりに対応

「電動油圧ブレーキシステム用ボールねじ」は、ブレーキブースタに使われています。ブレーキブースタとは、踏力倍加装置と呼ばれる自動車のブレーキ部品の一つで、ドライバーのブレーキ操作力の低減をサポートするものです。従来は、真空倍力式のブースタが主流で、エンジンの吸入負圧を使って、ブレーキを踏む力をアシストしていました。その役割をモータとボールねじなどを用いて電動化することにより、ブレーキを踏まなくても、モータで力を発生させ、止める力を発生させることができるのです。

ブレーキブースタの電動化の背景は、もともとは電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)が増えてきたことへの対応でした。EVやHEVでは、エンジンが搭載されなかったり、小さくなったりして、エンジンの負圧を従来のように使えなくなるため、電動式への置き換えが進みました。また、近年では、自動車の安全面でのニーズの高まりにより、需要が増えてきています。日本では、2021年11月から緊急自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の搭載の義務付けが実施されますが、今後、安全性へのニーズが高まれば高まるほど、ボールねじ式の電動油圧ブレーキシステムの搭載が増えていくと予想しています。

これまで培ってきた知見を活かして

電動ブレーキブースタには、すべりねじ式などいくつかの形式がありますが、その中でもボールねじ式が有望視されています。その理由の一つは、応答性に優れていることです。ボールねじは、ねじとナットの間にボールが入っているため、滑らかに動くことができます。そのため、モータを動かす際の動き出しが早く、応答性に優れているのです。今後、市場が電動ブレーキに求めるレベルが高まっていくことが予想され、ピックアップトラックのような大きい車も確実に止めなくてならなくなります。そうした状況下においても、より早く強く止めることのできる高速応答性に優れている点において、ボールねじ式は有利だと見ています。

また、今回の製品で、特に追求したことは小型・軽量化です。NSKは、2010年から電動ブレーキ用ボールねじの開発を開始し、この10年間でいろいろなお客様と意見交換をさせていただきながら、製品開発を進めてきました。これまでの開発においても、品質を保ちながらも、部品点数をいかに少なくするかを常に意識してきました。製品が小型・軽量化されれば、搭載スペースを省くことができ、お客様にも採用していただきやすくなるためです。培ってきた知見を活かすことにより、今回の製品では、ボールねじの構造部品の一体化、またサポート用ベアリングとボールねじの一体化を実現することができ、これまで以上の小型化・軽量化につながりました。

「電動油圧ブレーキシステム用ボールねじ」の構造イメージ
「電動油圧ブレーキシステム用ボールねじ」の構造イメージ

お客様の嬉しさを考えながら

社内でも初めて取り組む設計もあったので、各部署にこの設計の必要性を一つ一つ説明し、理解してもらいながら、量産へと進めていきました。お客様とも毎週、計100回以上の会議を重ねながら、お客様のサイズ・コストのニーズにどう応えるかを試行錯誤しながら検討していきました。

中島 正人

製品を設計する際に大切にしていることは、この製品がどこにどう使われるかを考えることです。のめりこみすぎると自分の設計している製品のことだけを考えてしまいがちですが、ブレーキの構造、クルマの構造を意識して設計を行うようにしています。お客様の立場だったらどう考えるか、社内の他の部門の担当者がこの図面を見たらどんな意見が出てくるだろうか。そういったことを考えられるなるべく広い視野を持って、お客様の嬉しさを考えた提案をしていきたいと考えています。交通事故のない社会に貢献できるように、今後も経験を積んでいきたいと思います。